「東京五輪・スケートボード男子ストリート・決勝」（２５日、有明アーバンスポーツパーク）

　東京五輪から新種目となったスケートボードの男子ストリート決勝が行われ、世界ランク２位で、世界選手権覇者の堀米雄斗（２２）＝ＸＦＬＡＧ＝が３７・１８点で金メダルを獲得。地元江東区出身の若武者が、五輪初代王者の栄冠を手にし、東京五輪新種目の金メダル１号にも輝いた。日本勢では世界ランク３位の白井空良（１９）＝ムラサキスポーツ＝が９位、青木勇貴斗（１７）＝ボードライダーズジャパン＝が１７位で予選落ちとなった。

　しゃく熱のコンクリートパークを、クールに、そして華麗に舞った。スケートボードにとっての五輪史１ページ目を飾る初代王者に輝いた日本の２２歳の若武者は「シンプルにうれしい。自分はこの江東区で生まれたので。江東区で五輪が開催されてそこで金メダルがとれてうれしい」と、はにかんだ。

　まるで漫画のストーリーのような鮮やかな逆転劇だった。堀米はラン２本で思ったように得点を伸ばせず、ベストトリック２本目までを終えた時点でも、まだメダル圏外の４位だった。自国開催の重圧に、本来の落ち着きを無くしていた。しかし、直前６月の世界選手権も逆転で制していた不屈の男にとって、ここからが本領だった。「心の中ですごく焦っていたけど、諦めていなかった。最後は自分の今までやってきたことを信じた」－。

　極限に集中を高めて臨んだベストトリック３本目。大技「ノーリー２７０ボードスライド」を決め、９・３５の高得点で反撃ののろしをあげると、４本目は「ノーリーバックサイド２７０ノーズスライド」をメイク。この日、全選手で最高得点となる９・５０点で金メダルを射程に。最後は今大会のために用意してきたという「ノーリーフロントサイド１８０　５Ｏ（ファイブオー）」を成功。怒濤（とう）の大技３連発で頂点へと駆け上がった。

　会場の有明アーバンスポーツパークのある江東区は、生まれ育った街。元スケートボーダーの父亮太さん（４６）に連れられた小松川公園で６歳から競技を始めた。高校卒業後、スケボーでの夢を追い求めて、本場米国へと渡った。英語も話すことができない中で、もがき、苦しみながら、スケボーで輪を築き、一から道を切り開いてきた。昨年１１月にはロサンゼルスに庭やガレージのついた４ＬＤＫの自宅を購入した。

　アメリカンドリームをかなえ、五輪の夢も実現した。ただ、「年収１０億円」を目標に掲げる２２歳にはまだまだ多くの野望がある。

　「アメリカにもっと大きな家を建てたいし、スケボーは五輪とか大会だけじゃない。ストリートでもアメリカでも映像を残して、アメリカで認められるプロになれるように、いいパート（映像）を残していきたい」－。

　会場は残念ながら無観客。ただ、日曜日の昼に、この若武者がみせてくれた夢の光景は、きっと多くの人を魅了した。「スケボーはまだそんなに人に知られていないので、その楽しさをこれから色んな人達に伝えていきたい」。新時代のニューヒーローは目を輝かせ、そして楽しそうに、未来を思い描いた。

　◆アラカルト

　◆生まれ

　１９９９年１月７日、東京都江東区出身。

　◆競技歴　父亮太さんの影響で６歳から競技を始める。１６年にアマチュアの登竜門タンパ・アマで４位となり、１７年から最高峰のストリート・リーグに参戦。１８年の初戦で日本人初優勝を飾ると、その時は３戦３勝を記録した。世界選手権では第１回大会だった１９年に銀メダルを獲得。今年の大会では初優勝。

　◆サイズなど１７０センチ、５５キロ。基本は右足を前にするグーフィースタンス

　◆アメリカンドリーム　子供の頃からの目標が「米国でプロになって１０億円稼ぐ」。現在スポンサーは１０社を超え、第一人者のナイジャ・ヒューストンらと肩を並べるトップに選手に。一流選手の証であるシグネチャーモデルのボードも発売された。