「東京五輪・スケートボード女子ストリート・決勝」（２６日、有明アーバンスポーツパーク）

　東京五輪新種目、スケートボードのストリート女子決勝が行われ、１３歳の西矢椛（もみじ）＝ムラサキスポーツ＝が１５・２６点で金メダルを獲得し、五輪初代女王に輝いた。９２年バルセロナ五輪の競泳女子平泳ぎの岩崎恭子（当時１４歳６日）を超える日本五輪史上最年少金メダリストとなった。１６歳の中山楓奈＝ムラサキスポーツ＝が１４・４９点で銅メダル。２位には西矢と同じ１３歳のライッサ・レアル（ブラジル）が入り、表彰台の平均年齢１４歳という新時代スポーツを象徴するような結果となった。

　幸せ、というよりも、今まで生きてきた中で、「１番うれしい」瞬間だった。金メダルが決まると、競技中から絶やさなかった笑顔のまま、瞳からは自然と涙があふれ出した。「うれしすぎました」。湧き上がる感情をまだまだうまく言葉にはできない。１３歳のヒロインは照れながら、はにかみながらつぶやいた。

　しゃく熱の太陽が照らす巨大なコンクリートの公園は、まるで少女たちの遊び場だった。失敗してもたたえ合い、成功すれば自分のことのように喜びながら、和気あいあいと世界最高峰の戦いは進んでいった。

　西矢は後半のベストトリックで２本連続で失敗。「焦っていた」。ただ、ここからが圧巻だった。６位で迎えたベストトリック４本目、得意の「ビッグスピンボード」を完璧に決めて、４・６６点のハイスコアで一気に首位へ。５本目もまとめて、最後は「友だちであり、ライバル」と話す最終演技者の中山との金メダル争いに。「乗ってほしいけど、乗ってほしくないみたいな気持ちだった」。親友は大技に失敗。１３歳が一等賞となり、五輪を舞台にした比べっこは完結した。

　２つ年上の兄颯さんが先に始めたことをきっかけに、「私もやりた～い」とボードに乗った。１つ１つ板を思うように動かせるようになることが楽しくて、何度転んでも夢中で遊んだ。ＹｏｕＴｕｂｅやインスタグラムで世界のトップ選手の映像を見ることができる時代。驚異的な吸収力で技術を習得し、世界の頂点へと駆け上がった。日本代表の早川大輔コーチは「板に乗る感覚がずばぬけている。スケーターが憧れるスケボーをする選手。どんな崩れもぶれないで修正できる」と、そのセンスに舌を巻く。

　ボードを降りると、まだまだ普通の中学２年生。母智実さん（３９）は「ずっとスマホを見ている。ティックトックを見たり、インスタを見たり。もうホンマに中学２年生の女の子」と笑う。いつも大会の後には、母からのご褒美がある。娘が「焼き肉に行きたいです！」と話したことを伝え聞くと、智実さんは「ハハハッ。絶対に連れて行きます」と、拳を握った。

　日本史上最年少での金メダル。「最新記録だと思うのでうれしい」と笑った西矢には、まだまだ大きな夢がある。「世界で知らない人がいないぐらい有名になりたいです」。人生最高の夏を終えても、大冒険は続く。

　◆西矢　椛（にしや・もみじ）２００７年８月３０日、大阪府松原市出身。６歳のときに競技を始め、１９年に世界最高峰のＸゲーム米国大会で２位に食い込んだ。２１年世界選手権では銀メダルを獲得。ムラサキスポーツ所属。１５５センチ、４５キロ。