【瀧本誠の目】永瀬貴規 我慢の柔道、粘りの勝利
「東京五輪・柔道男子81キロ級・決勝」(27日、日本武道館)
リオデジャネイロ五輪銅メダリストの永瀬貴規(27)=旭化成=が、決勝で18年世界王者のサイード・モラエイ(モンゴル)に延長戦の末に優勢勝ちし、初の金メダルを獲得した。同階級の優勝は2000年シドニー大会の滝本誠以来。日本男子は初日から4日連続での制覇。男子の金メダル4個は現行の7階級制では最多で、無差別を含む8階級が実施された1984年ロサンゼルス五輪と並んだ。
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男子81キロ級の永瀬選手はひと言でいえば我慢の柔道、粘りの勝利ですね。技術的には高いものを持ってはいても、これといって切れる技がある方じゃないので、苦戦を予想していましたが、見事に私の見方を覆してくれました。
決勝戦の相手モラエイは力が強い上に初対戦。最初は相手の出方を見る感じで始まって、ポイントは2分過ぎでした。相手が組み手を左で背中をつかむように変えてきたところです。永瀬選手は相手の組み手になった場合は指導を受けてでも逃げる作戦で、これが奏功しました。まともに相手になっていたら危なかったと思います。
この危険な時間帯をしのぎ切った後は、真骨頂の我慢の柔道が真価を発揮しました。疲れの見え始めたモラエイをしっかり自分の組み手でつかまえ、絶妙のタイミングで投げ切りました。81キロ級は私以来の金メダル。実は決まった瞬間はガッツポーズをしてしまいました。本当は取ってほしくなかったんですけどね(笑)。これで明日以降の重量級にも弾みがつくでしょう。
(2000年シドニー五輪柔道男子81キロ級金メダリスト、駒大総合教育研究部 スポーツ健康科学部門准教授・瀧本誠)