21年ぶり金のウルフ 井上康生より強い?監督「直接対決ならどうなるか分からない」
「東京五輪・柔道男子100キロ級・決勝」(29日、日本武道館)
ウルフ・アロン(25)=了徳寺大職=が、趙グハム(韓国)に延長の末に鮮やかな一本勝ちで金メダルを獲得した。日本勢の同級制覇は2000年シドニー五輪の井上康生以来、21年ぶりの快挙。また、全日本選手権、世界選手権に続いてタイトルを取り、史上8人目となる「3冠」を達成した。
無尽蔵のスタミナと緻密な柔道脳という持ち味を発揮しての戴冠だった。決勝で、ウルフは組み手で勝機を探りながら9分35秒、狙い澄ました大内刈りで一本勝ち。両腕を突き上げて武道館に叫んだ。憧れだった日本男子の井上監督以来となる“花形階級”の威信を奪還し「20年間金メダルがない階級だったので、僕が取り戻してやろうという気持ちで戦った」と胸を張った。
井上監督は「非常に緻密な戦いだった。努力に努力を重ねてきた、彼の全てを出してくれた」と万感。自身も達成している3冠に王手を懸けていたウルフに対し「お前、3冠を狙える位置にいるんだな?」とハッパをかけていたといい、「見事に達成してくれた彼の戦いが誇らしい。私自身が現役の頃と比較しても、これほど緻密に努力を重ねた選手はいないのでは」とうなずいた。
さらには、「(現役時代の自身と)直接対決したら(勝負が)どうなったか分からないような、素晴らしい選手に育ったのではないかと思う」と最大級の賛辞を贈った。
尊敬する先人たちに肩を並べた25歳は「このメダルに見合った人間になりたい」と襟を正していた。