太田氏の悲願成就 フェンシング界に新たな一歩 武井新会長につないだバトン
「東京五輪・フェンシング男子エペ団体・決勝」(30日、幕張メッセBホール)
男子エペ団体が日本勢初となる金メダルを獲得する快挙を果たした。日本フェンシング界のレジェンド的存在で、日本協会前会長の太田雄貴氏(35)の思いが実った勝利。今年6月から新体制としてタレントの武井壮氏(48)を会長に迎え、新たな出発を図った日本フェンシング界にとって、大きなニュースとなった。
ついに歴史が動いた。男子エペが団体でメダルを獲得。太田氏の悲願がかなった瞬間でもあった。
フルーレ代表だった太田氏は08年北京大会の個人で準優勝し、日本勢初のメダルを獲得。12年ロンドン大会では同種目団体の準優勝に貢献した。
しかし、世界ランク1位で臨んだ16年リオ五輪はまさかの初戦敗退。当時、宿舎で同部屋だったエペ団体主将の見延和靖(ネクサス)と男子サーブルの徳南堅太(デロイトトーマツコンサルティング)に「あと頼むぞ」と夢を託した。
その後は、17年に日本協会会長に就任し、さまざまな方法で競技普及に尽力してきた。全日本選手権をエンターテインメント化し、観客を増加。スポンサー集めにも奔走した。自身が果たせなかった金メダルの夢に向かって剣を振り続ける後輩たちをサポートしてきた。
東京五輪目前となった今年6月に任期を終え会長を退任。思い描くビジョンにより近づき、その上を行くために、と武井氏にバトンを渡した。
会長として五輪を迎えるにあたり武井氏は「太田会長が引っ張ってきた体制、ビジョンの集大成だと思っている」と話していた。熱い思いを引き継ぎ、フォロワー数約155万人を誇るツイッターで持ち前の発信力を生かして、エペ陣の健闘を多くの人に伝えた。
前会長と新会長、2人の思いも選手たちの背中を押したはず。4人の剣士が成し遂げた快挙は日本フェンシング界にとって大きな一歩となった。