青学大・原晋監督 十分にメダル狙える位置にいる三浦選手
東京五輪期間中、デイリースポーツでは特別コラム「祭典記」を掲載する。五輪への熱い思いを寄せる6人が日替わりで登場。9回目は青学大陸上部の原晋監督(54)が、東京大会への期待などをつづった。
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陸上男子3000メートル障害予選で、順大の三浦選手が日本記録を更新して決勝に進出しました。昨年の全日本大学駅伝、今年の箱根駅伝、関東インカレなどさまざまな大会で彼の走りを見てきましたが、ラストスパートの速さや強さは1年生のときから抜きん出ていました。今回、本来のスパート力にさらに磨きがかかった、という印象を受けました。
3000メートル障害は水濠を跳び越えていくためのバネ、テクニック、走りのリズム感などが要求されます。三浦選手は身体能力が高く、最高のスキルがあるので、戦う前から十分に決勝進出はあると予想していましたが、期待以上の走りでした。スタート後から積極的に走っていましたし、最後まで集団にいれば勝てるという自信もあったのでしょう。
1500メートルや5000メートルなどでも戦えますが、あえて3000メートル障害に取り組んでいける素材です。今までの日本陸上界にそのような選手はなかなかいませんでした。陸上界の常識を超える活躍をしてくれました。地元開催ですし、特に緊張感もなく臨めたのではないでしょうか。
軽々しく決勝でメダル、とは言えませんが、十分狙える位置にいると思います。チャレンジしてほしいですね。1番を取りにいくのと8位入賞を狙うのとでは、ポジショニングが違ってきます。ナンバーワンを狙える位置で勝負すれば、仮にメダルを取れなくてもパリ五輪に生かされます。全体の3分の1よりも前で、積極的にレースを進めてほしいものです。
男子1万メートルは残念な結果でしたが、根本的な陸上界の改革をしていかないと、いつまでたってもアフリカ勢にはかなわない、ということをあらためて感じました。陸上界全体として、記録を出すための速さも必要ではあるのですが、変化に対応できる強さを出していく必要があると思っています。
そのためのトレーニングを実際にはやっていても、あくまで練習を通じてです。試合で発揮できなければ、本当の意味でのペースの上げ下げに対応できる力はついてこないと思うのです。勝負を争う大会を制度的に作っていき、根本的に改革していかなくてはいけません。
一つの改革としてクロスカントリーを積極的に取り入れていかなくてはいけないとも考えています。アップダウンに対応できる強いランナーの育成を目指し、クロスカントリー大会を積極的に開催する仕組みを作っていく必要もあると思っています。
◆原晋(はら・すすむ)1967年3月8日、広島県三原市出身。世羅高から中京大に進学し、中国電力に入社。04年に青学大の監督に就任した。09年の箱根駅伝で33年ぶりの出場に導き、15年の初優勝から4連覇を達成。16年シーズンは出雲、全日本、箱根と大学駅伝3冠を成し遂げた。現在は青学大陸上部長距離ブロック監督、同大学の地球社会共生学部教授、GMOアスリーツのアドバイザーなど多方面で活躍。2014年度にデイリースポーツ制定、ホワイトベア・スポーツ賞を受賞した。