すべてを懸けた夏が終わる 金井大旺、渾身走も壮絶転倒 拍手に包まれ、歯科医の夢へ
「東京五輪・陸上男子110m障害・準決勝」(4日、国立競技場)
前日本記録保持者の金井大旺(25)=ミズノ=は8台目のハードル後に転倒し、26秒11で2組8着となり、準決勝敗退となった。日本記録保持者の泉谷駿介(21)=順大=は13秒35で3組3着で、タイム順のボーダーラインにわずか0秒03届かずに敗退。日本人初の決勝進出はならなかった。
気持ちの整理をつけてきたはずの取材エリア。ただ、なかなか言葉が出てこなかった。競技人生の集大成として挑んだ東京五輪。手の届く位置にあった決勝への扉は、目前で閉じられた。「そうですね、少し時間が経って・・・まあ挑戦、してきて・・・」。40秒間、思いを噛みしめた後、「自分のできる限り修正してきたんですけど、最後スピードが上がった時に、自分の弱さが出たと思ってます」と、振り返った。
抜群のスタートから序盤先頭争いを繰り広げた。中盤でも一歩も退かず、食い下がったが、8台目のハードルに右足を引っかけ、そのまま転倒。「かなりスピードが上がってきていたが、右の選手が出てきた時に、腕を持っていかれてバランスを崩した。耐えきれませんでした」。すべてを懸けて挑んだ夏が終わった。
今大会を最後に第一線を退き、歯科医を目指す。「こういう悔しさがあるので、もしかしたら次チャレンジすれば決勝いけるかもしれないとは感じるけど、最初で最後と決めていたので。そう決めていたからこそ、今まで準備できて、今の実力がある。もう少し足りなかったなと思う」と、未練を断ち切るかのように言葉を紡いだ。
転倒した後、金井は立ち上がり、残る2台のハードルを越えて、ゴールした。26秒11。自己ベストよりも12秒95遅いタイムが、最後のレースとなった。「頭が真っ白だった。自分の挑戦が終わってしまったんだなと」。ただ、気がつけば、スタジアムからは自然と拍手が注がれていた。「離脱するという選択肢はなくて、ゴールするという選択肢しか僕にはなかった。無観客の中でも拍手があって、すごく温かみを感じました」。勇敢な若武者の挑戦の終わりを、誰もが称えていた。
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