清水希容 無観客も世界に届けた魂の演武「一緒に戦ってきた、特別な形」
「東京五輪・空手女子形・決勝」(5日、日本武道館)
東京五輪の新種目である空手で、女子形の清水希容(27)=ミキハウス=が銀メダルを獲得した。30点満点で清水は27・88点。わずか0・18点の僅差で18年世界女王のサンドラ・サンチェス(スペイン)に敗れた。2人は互いに決勝で「チャタンヤラクーサンクー」を披露。銀メダルに終わったが、清水は日本武道館で魂の勝負形を見せた。
東京五輪の決勝の舞台で、清水は「一緒に戦ってきた、特別な形」という「チャタンヤラクーサンクー」を力の限り演武した。
形は世界空手連盟が認定する102種類から選手が選択して演武する。立ち方やタイミングなどの「技術点」と速さや強さなどを評価する「競技点」の30点満点で争う。清水が最も得意とするのが「チャタン-」だ。
中3の頃から練習を始め、高校生の頃には「得意形」になった。「五輪の舞台で、絶対にこれで勝ちに行く気持ちで稽古を積んできた」。大会序盤に行われた柔道を見ながら会場の雰囲気を想像し、決勝の畳でサンチェスとのガチンコ勝負をイメージしてきた。
世界の頂点を目指すにあたり、清水がいつも思い描く光景がある。12年世界選手権、現在選手強化委員長を務める宇佐美里香氏が優勝した映像を動画サイトで見た時、会場がスタンディングオベーションで拍手する光景に鳥肌が立ち、涙が出たのだ。体からあふれる感情に心を打たれた。その決勝の舞台で宇佐美氏が演じたのが「チャタン-」だった。
大会は無観客。日本武道館で万雷の拍手を浴びることはかなわなかったが「この舞台に入るまで、たくさんの人が応援の言葉をくれた。カメラの向こうで必ず見てくれている。だからこそ自分の思いを世界中へ伝えられるようにって気持ちで演武した」。魂のこもった熱演だった。
形の魅力について清水は「自分の理想像を自分の体で表現できるとすごく楽しいしうれしい」という。五輪種目に空手が採用されて以降、ずっと日本武道館の決勝で戦う日を待っていた。夢が実を結んだ瞬間だった。