琉球で生まれた空手 喜友名の快挙に沸く地元「空手振興課」
「東京五輪・空手男子形・決勝」(6日、日本武道館)
新競技・空手で沖縄県出身の喜友名諒(31)=劉衛流龍鳳会=が男子形で頂点に立った。空手発祥の地として、県民の思いは熱く、そして強い。沖縄初の五輪金メダリストは、大きな期待を背負って戦い抜いていた。
愛好者は世界194カ国1億3000万人もいると言われている空手。発祥地沖縄で生まれ育った喜友名が金メダリストとなった。
「沖縄の子どもたちにも夢を諦めず追いかけ続ければ、しっかり達成できるということを知ってもらえたかなと思うので、大きな目標だったり希望をもって自分の道に進んでほしいなと思う」
もともと空手は琉球王朝時代に士族(さむれぇ)が行っていた武術「手(てぃ)」が発祥。「唐手(とぅでぃ)」が「唐手(からて)」となり「空手」に統一されたとされる。その後、文化として学校教育に取り入れられ広く普及したという。
発祥の地・沖縄を国内外に発信するため、沖縄県庁の文化観光スポーツ部には日本で唯一「空手振興課」がある。役所に一競技を支援する部署があるのは極めて異例だが、2016年4月に誕生。(1)保存・継承、(2)普及・啓発、(3)振興・発展の3点を目的とする。
職員や非常勤合わせて17人が勤務。スロバキアのナショナルチームにいたアンドレア・クレメンティソバーさんも、伝統的な沖縄空手を学ぶために勤めている。17年3月には沖縄空手会館がオープン。道場のほか展示資料室も設置し、沖縄空手の文化を継承しており、年間10万人以上が訪れている。10月25日を空手の日と定め、国際通りで形の一斉演武を行うなどしていた。
空手振興課の佐和田勇人課長は「振興発展の分野としては東京五輪の影響力は大きい」と言う。コロナ禍以前は国外からも多くの競技者が稽古に訪れており「喜友名選手の五輪優勝で、沖縄を目指す人や発祥の地であると知ってくれる人が増える」とさらなる“金効果”に期待した。
喜友名が稽古を重ねる劉衛流はもともと門外不出で一子相伝。喜友名の師匠で世界選手権3連覇の佐久本嗣男氏(73)がこの流派の5代目となり門戸が開かれた。多くの武道は足と同時に突きを出す一足一拳だが、劉衛流は一足二拳。攻防一体でジグザグに動くのが特徴という。喜友名はかねて「沖縄県出身の自分が五輪で優勝する、新しい歴史を作りたい」と語っていた。
「沖縄空手では空手に先手なしと言われる。守りから入り、来た相手を一撃で倒すのが特徴」と佐和田さん。同課は空手形のユネスコ無形文化財認定も目指している。空手は24年パリ五輪の除外が決まっているが、沖縄が築いた伝統は脈々と受け継がれ、世界に伝わっていく。そして沖縄が初めて生んだ金メダリスト喜友名は、その伝統を背負いこれからも道を究め続ける。