朝原宣治さんの目 リレーはパリまでに“どんな状況でも競り勝てる強さ”が必要
「東京五輪・陸上男子400mリレー・決勝」(6日、国立競技場)
16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの日本は、予選と同じ1走多田修平(住友電工)、2走山県亮太(セイコー)、3走桐生祥秀(日本生命)、4走小池祐貴(住友電工)で挑んだが、1、2走間でバトンが渡らず、まさかの途中棄権に終わった。このレースを、北京五輪で同種目銀メダリストの朝原宣治氏が分析した。
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リレーは出る方が判断をしますから、山県選手がスタートを切る責任者になります。出るのが速すぎたのか、それとも多田選手の後半が持たなかったのか。ただリオデジャネイロ五輪のときもそうでしたが、ぎりぎりで届くバトンパスということがあります。
百戦錬磨の山県選手が速く出ることはあまり考えられません。おそらく練習のときにぎりぎりのバトンパスをしていて、意外と多田選手の最後が持たなかった、ということかもしれません。
先行したい気持ちもあったと思います。タイムで言えば全体で8番目での決勝でしたし、どこかを改善しないとメダルに届かないことは、みんなの気持ちの中にあったはずです。攻める気持ちでいかないと、という追い込まれた感覚もあったと思います。
そもそもの計画では100メートルで3人のうち複数が準決勝に進み、その中で1人でもいいから決勝に進出したメンバーがリレーを走る、ということが想定されていました。それが全員予選落ちしたメンバーでリレーを走るとなると、やはり自信がなくなります。
予選を通って選手たちは少し吹っ切れたと思いますが、吹っ切れたからと言ってメダルが取れるか、というとそこまで甘くはありません。今持っている力を出し切らないとメダルには届かないということで、覚悟を決めていたのではないでしょうか。というのもバトンパスのときに山県選手はまったく緩めていませんでした。普通は渡らないと思うと徐々に力を緩めたり、減速したりしますから。
私はアトランタ五輪のときにバトンパスで失敗しました。初めて任されたアンカーでしたが、バルセロナ五輪で入賞した後でしたし、周囲の期待を感じていました。
そのときはタイミング的に完全に私が速く出ていました。焦りからでした。ただ、そういう失敗を経て次のシドニー五輪の6位入賞につながったと思っています。
選手たちの中で東京五輪というのはすごく大きかったはずです。結果をしっかり受け止めて次に進まなければいけませんが、パリへの仕切り直しとなるとかなりエネルギーが必要になります。
個人のタイムだけではなく、実際に速い選手と戦っても記録を出せる強さを備えつつ、そういう選手たちが4人集まって一つになる形にしなければ、世界はどんどん強くなっています。
大切になってくるのは分析と経験。コロナ禍で選手の国際大会でのレース勘がなくなっていますが、パリまでにどんな状況でも競り勝てる強さを身につけていく、ということしかないと思います。(2008年北京五輪男子400メートルリレー銀メダリスト、「NOBY T&F CLUB」主宰)
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