スピード生かした“平面バスケ”の成熟 デイリースポーツ記者が語る女子バスケ銀への道
「東京五輪・バスケットボール女子・決勝、日本75-90米国」(8日、さいたまスーパーアリーナ)
敗れてなお、晴れやかな姿が印象的だった。バスケット女子決勝。日本は、米国に75-90で敗戦。しかし過去最高成績だった1976年モントリオール五輪の5位を上回り、男女を通じて初の表彰台で、輝かしい銀色のメダルを手にした。トム・ホーバス監督(54)の緻密な戦術とスピード重視のスタイルを、選手全員が理解、実践して体格差を跳ね返した戦いの成果だった。
高さが重視されるバスケにおいて、8強以上で平均身長最小176センチの日本の銀メダルは快挙と言っていい。米国は203センチのグライナーを含め190センチ以上が5人。ホーバス監督が「きれいなバスケ」と胸を張る鮮やかさが、日本中、そして世界中を魅了した。
代表合宿というと、うまい選手が集まり、プレーの精度をすり合わせる印象だが、バスケ女子は全く異なる。心身両面の厳しい練習で一からチームを築き上げるイメージだ。
高田は「正直試合の方が楽」という。体はもちろん、ホーバス監督が掲げる考えるバスケに苦戦する選手が多く「頭を使って状況判断をしないとまず12人に選ばれない」と高田。フォーメーションは100通りはあるといい「頭がパンクする」と話した選手もいた。
もう1つはスピードを生かした“平面バスケ”の成熟度の高さ。193センチの渡嘉敷がケガで離脱して以降、全員が走り、高確率に3点シュートを決める攻撃を極めてきた。同時に「守備はフルコートでプレッシャーをかけ、よりアグレッシブに守るとやってきた」と町田が言うように、ボールを持った相手を2人で囲む「ダブルチーム」で重圧をかけ、ミスを誘う守備を世界相手にも貫いた。
学生には比較的多く見られる守備戦法だが、ダブルチームは突破されるとノーマークができやすく賭けに近い側面も持つ。全員が共通認識を持っていないと穴ができる上、運動量も必要なため、即席チームには不向きな守り方。日本の成熟度は世界を驚かせるほど高かったと言える。
リハビリに励んでいた渡嘉敷の五輪断念発表は6月1日。この時、6月中旬予定だった代表発表を7月1日に延ばした。関係者によるとこれはより速く、より緻密で、守備で攻められるバスケが遂行できる選手をギリギリまで見極めたいというチームの意向。結果、町田が「この12名でしかできない」と言えるバスケが完成した。
そして何より、指揮官が金メダルへの思いを一度もぶれさせなかったことが大きい。SG林は「どんな時でも『自信をもってやれ』と言ってくれた」。選手へ「できる」と声をかけ続けた。謙遜しがちな日本人だが、選手もいつしか「金メダル」と臆することなく言うようになった。
時間をかけ、努力を重ね、信頼を築いた結果、日本人らしい「緻密さ」と日本人にはない「前向きさ」を兼ね備えたホーバスバスケは完成した。泥臭く、鮮やかに快挙を成し遂げた。(デイリースポーツ五輪バスケットボール担当・國島紗希)