松山、米ツアー活躍のカギは英会話向上

 男子ゴルフの松山英樹が、23日開幕の米ツアー、ファーマーズインシュランス・オープンで今年の初戦を迎える。当初はソニーオープン(9~12日)に出場予定だったが、左手親指付け根の関節炎による調整不足でキャンセル。2週間遅れでのシーズンインとなる。

 昨年のメジャーでの活躍(全米オープン10位、全英オープン6位)が示す通り、世界最高峰の舞台でも十分に通用するだけの実力を持っていることは間違いない。となると、待たれるのは1日も早い米ツアー優勝。ライバルの石川遼とどちらが先に初優勝を手するかも注目される。

 ただ、本格参戦1年目の松山にとっては未知の部分も多く、体調管理やコースへの順応など当分は手探りしながらの戦いが続く。

 ほぼ毎週試合が行われ、しかも時差のある広大な領土を転戦する米ツアーの過酷さは日本ツアーの比ではない。松山は専属トレーナーを帯同。プライベートジェットを保有する会社とも契約を結ぶなど対策は立てている。

 長丁場を乗り切るためには、体調とも相談しながら休養に充てる週を挟んでいくことも必要だろう。当面は米国内に拠点(自宅)は構えない方針だが、状況を見ながら改めて拠点作りの有無を判断していくことになる。

 初めてプレーするコースへの対応力も試される。通常は月曜にコース入りして練習ラウンドを開始することになるが、プロアマ戦が行われたり、休養日を取ったりすることもあるので、実際に練習ラウンドできるのは2日程度となるだろう。

 その短い日数でコースやグリーンの特徴をしっかりと把握して初日を迎えられるか。ハイレベルな戦いが繰り広げられる米ツアーでは初日から出遅れているようでは、まず優勝争いに絡めない。

 そして、最も重要なカギを握るのが米ツアーの中で、いかに早く自分の居場所を見つけられるか。言い換えれば、ツアーの環境になじみ、トップ選手たちのコミュニティーの中に入っていけるかが大事になってくる。そのためには英会話のマスターは不可欠。いつまでも通訳に頼ってばかりいては輪の中に入っていくのは難しい。

 日本ツアーで100勝以上挙げていた尾崎将司は、海外メジャーではなかなか力を発揮できず、「内弁慶」と呼ばれた。見かけとは違い、意外に細やかな神経の持ち主だったジャンボ。英語を話せないこともあって選手の中に入っていくことができなかった。海外の生活が肌に合わなかったことが活躍できない大きな理由だった。

 一方、ライバルの青木功は日本人としては初の米ツアー優勝(1983年、ハワイアンオープン)を飾り、メジャーでも優勝争いを演じた。米シニアツアーでも通算9勝の活躍。小さなことにはこだわらない開けっぴろげな性格、片言の英語でも尻込みせずに選手に話しかけ、どんどん仲間を増やし、攻め方のアドバイスを受けることもあった。米ツアー3勝を挙げている丸山茂樹もしかり。陽気な性格で他の選手から好かれ、ツアーの中で自分の立ち位置をしっかりと確立した。

 野球などの団体競技と違ってゴルフは個人競技。親しい選手を作っておけば、日々の練習も一緒にする機会が増えるだろうし、コースの外でも困った時には助けてもらえたりするものだ。しかし、自分の殻に閉じこもり、孤立するようなことになれば、知らず知らずのうちにストレスもたまり、プレーにも影響を与えかねない。

 当初は心配された松山の英会話力も、若いだけあって吸収力は早い。昨年から何度も海外でプレーするうちに、徐々に聞き取れるようにはなってきているようだ。さらに会話力が高まれば、もっと米国での生活や日々のツアー生活も楽しめるようになるだろう。

 ゴルフの技術を高めていくことはもちろん大切だが、それだけでは海外での成功はつかめない。一年でも長く米ツアーでプレーするためにもコミュニケーション能力を高め、他の選手から受け入れられるとともにファンからも愛される真のインターナショナルな選手を目指してほしい。

(デイリースポーツ・工藤直樹)

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