亀田“負けても王者”真実を明らかに
国際ボクシング連盟(IBF)世界スーパーフライ級王者・亀田大毅(25)=亀田=の“負けても王者”問題について、日本ボクシングコミッション(JBC)が今月中にも倫理委員会を開き、何らかの結論を出す見通しとなった。2013年の師走に起こった騒動に、「また亀田か」と、うんざりしている人もいるかもしれない。まず、この問題を振り返って整理してみよう。
昨年12月の大毅とWBA同級王者リボリオ・ソリス(ベネズエラ)による団体王座統一戦で、ソリスが前日計量をパスできず失格となった。その後のルールミーティングで王座の扱いが協議され、IBF立会人のリンゼイ・タッカー氏は「大毅が負ければIBF王座は空位となる」と報道陣に説明。そして、大毅は敗れ、王座を失ったと思われた。だが、タッカー氏は試合後に急きょ会見を行い、「IBFの王者は、勝っても負けても亀田。IBFのルールでそうなっている」と、前日の発言を翻し、大毅は王者にとどまった。これが一連の経緯だ。
なぜタッカー氏は発言を翻したのかが最大の問題だ。「負けたら空位と聞いていた」(森田事務局長)というJBC。勝敗に関係なく王座を保持することが決まっていたと主張する亀田側。タッカー氏の「記憶にないが、前日にそう言ったのならミステークだ」という弁明は何とも苦しい。むしろ、発言を翻さざるを得ない事情があったのではないかと疑いたくなる。
実は、試合後からタッカー氏の会見が行われるまでの間に不可解な出来事があった。試合後、報道陣が大毅のコメントを取るために控室の前で待ち構えていた。これは、ボクシングの試合ではおなじみの光景。だが、亀田ジム関係者が「ここは控室や、出て行ってくれ」と一喝して報道陣を追い出し、通路の扉を閉ざした。そして、報道陣が扉の向こうのインタビュースペースで待つこと10数分。大毅が出てきたと思いきや、タッカー氏が現れ“負けても王者”会見を行ったのだ。
報道陣不在の10数分に何が行われたのかは分からない。だが、なぜ隠す必要があったのか。聞かれたくない、見られたくないことをやっていたと思われても仕方ないだろう。そこでタッカー氏に発言を翻させる何かがあったのではないか、と考えるのはうがちすぎか。
JBCの関係者は「権威あるタイトルマッチなのだから正々堂々とやりましょうよ。それが我々の求めてることです」と話す。見えないところでコソコソ動いて、最後に「実はこうだったんです」と幕引きするなど、公正なスポーツとは言えない。ルールミーティングで決まったことは何なのか、本当にタッカー氏が言い間違えただけなのか。調査を進めているJBCには、処分すべきなら厳格な処分を、処分の必要がないなら、なぜこのような混乱が起こったのか、知っている限りの真実を明らかにして説明して欲しい。
(デイリースポーツ・洪 経人)