阪神若手選手が故障しなくなったわけ
05年以来の優勝を目指す和田阪神。今シーズンは掛布雅之DCをはじめ、高代延博内野守備走塁コーチ、トーマス・オマリー打撃コーチ補佐、古屋英夫2軍チーフ兼打撃コーチといった指導者を招き入れた。新たな血を注入し、チーム力の強化や底上げを図っている。
同時に、違う角度からの強化にも取り組んでいる。トレーニング部門だ。和田監督が嘆いた昨季の「シーズン終盤の失速」を繰り返さないため、さまざまな試みが実行に移されている。
昨オフ、11月末に実施された体力測定。前年までと違い、より野球に対する専門的な項目を導入した。そして、すべてを数値化してレーダーチャートなどを作成。結果が記された用紙を選手へ手渡して、トレーナーと個別面談を行った。強化点などを細かく伝えて、オフのトレーニング方法のアドバイスをしたという。
昨シーズンまでは、試合後や練習後に割り当てられていたウエートトレーニング。厳しい練習後は、体力が残っていないため、十分なウエートトレができない選手が多かった。加えて、寮生活の若手は夕食の時間が決まっていることもあり、限られた時間しかウエートトレに当てることができなかった。
そこで考えられたのが「早朝ウエートトレーニング」だ。2軍では11月のフェニックス・リーグから、若手野手を中心に導入されている。体が元気な朝にウエートトレを行うことによって、じっくり体を鍛えることができる。さらに、練習前に体を動かすことで、ケガ防止にもつながる効果が得られる。昨年の秋季キャンプや今春季キャンプでも実施されており、ここまで故障で離脱する若手野手は皆無に等しいという成果が上がっている。
早朝ウエートの効果はこれだけではない。グラウンドでの練習が終われば、その後の時間は選手が自由にできる。夜間練習も廃止され、夕食をゆっくり取ることが可能になった。ある若手選手は「時間を気にせずに夕食が食べられるのはうれしい。その後も自分のフォームチェックの映像を見たり、時間を有効に使えるので精神的に疲れることもないですね」と話すように、早朝ウエートは好評のようだ。
若手にとって体を大きくする上で、食事は大事になってくる。平田2軍監督も「北條や一二三も体が大きくなってきている。トレーナーがしっかりメニューを考えてくれているので、効果が出ていると思う。食事もしっかり取れているし。これからも、話し合いながら時間を有効に使っていきたい」と、早朝ウエートの効果を実感しているようだ。
ほかにも、打撃練習前に筒状のトレーニング機器を用いてのスイング矯正や、体幹メニューを増やして、さまざまな体力強化を図っている。
今季を「トレーニング改革元年」と位置づけている阪神。もちろん、すべてが短期的な結果を得られるわけではない。中、長期的なビジョンを持ち、試行錯誤していくことになる。トレーニング部門の発展は、阪神の未来を明るくする。
(デイリースポーツ・西岡竜一)