関脇豪栄道、一気に大関を狙え
モンゴル出身の3横綱がそろって登場する大相撲夏場所が、東京・両国国技館で11日からスタートする。もちろん新横綱鶴竜(井筒部屋)が最大の目玉となるが、先輩横綱の意地を見せたい白鵬(宮城野部屋)、日馬富士(伊勢ケ浜部屋)も黙っていないだろう。3横綱がそろって出場するのは2000(平成12)年11月の曙、貴乃花、武蔵丸以来とあって、優勝争いが激しくなるのは間違いない。
06年1月の栃東(現玉ノ井親方)以来となる日本人力士の優勝を目指す大関稀勢の里(田子ノ浦部屋)、琴奨菊(佐渡ケ嶽部屋)も奮起するはず。さらに春場所に続いて上位陣総当たりの人気者・遠藤(追手風部屋)は、初めてマゲを結って登場と見どころがたっぷり。チケットの売れ行きも好調で、すでに土日分(1、7、8、14日目、千秋楽)は完売。4月29日に行われた横綱審議委員会の稽古総見でも、無料一般公開とはいえ7年ぶりに8000人以上の観客が国技館に詰めかけるなど、ファンの期待の大きさがうかがえる。
話題満載の場所だが、ここは関脇豪栄道(境川部屋)に注目してみたい。明治以降では魁皇(現浅香山親方)と並んで史上1位タイとなる関脇連続在位が13場所となった。1月8勝、3月12勝を挙げており、大関昇進の目安が3場所合計33勝といわれているので、13勝をマークすれば文句なしで昇進が決まるだろう。仮に12勝どまりだったとしても、横綱・大関戦の勝敗・内容によっては、これまでの実績が加味されて昇進するケースもありそうだ。終盤まで優勝争いに加わるような活躍ができれば、大きくアピールすることができる。
豪栄道は関脇で2ケタ勝利を挙げたのが3月で4度目。しかし、過去3回は翌場所でひとケタの勝ち星に終わっており、昇進ムードを盛り上げることができなかった。2年前の12年3月に鶴竜が大関に上がったときは、史上初の6大関(横綱は白鵬1人)というかつてない飽和状態。そこから日馬富士、鶴竜が横綱へ、把瑠都、琴欧洲がケガで引退と現在は稀勢の里、琴奨菊の2人だけになった。昇進条件のハードルが下がることはないものの、新しい大関誕生を期待するムードが高まっているのは確かだろう。
1場所15日制が定着した1949(昭和24)年5月以降、優勝して大関に昇進した力士は以下の通り。
栃錦(52年9月)
朝汐(のち横綱朝潮、57年3月)
大鵬(60年11月)
佐田の山(62年3月)
栃ノ海(62年5月)
北の湖(74年1月)
三重ノ海(75年11月)
千代の富士(81年1月)
琴風(81年9月)
北天佑(83年5月)
曙(92年5月)
千代大海(99年1月)
出島(99年7月)
の13人。そうそうたる力士が名を連ねている。
ただ、15年前に千代大海(現佐ノ山親方)と出島(現大鳴戸親方)が、劇的V→大関昇進というシーンを演じてから随分と時間が経ったものだと感じる。千代大海は横綱若乃花と本割から決定戦、さらに取り直しまでの死闘を繰り広げた。出島は同部屋の横綱武蔵丸の援護射撃で横綱曙に並び、優勝決定戦で千載一遇のチャンスを見事にモノにした。今でも鮮明に覚えているほど強烈なインパクトがあった。
前出の遠藤をはじめ、新小結の千代鳳(九重部屋)やエジプト出身の大砂嵐(大嶽部屋)、さらに大器の呼び声が高い照ノ富士(伊勢ケ浜部屋)、底知れないスケールを感じさせる新十両の逸ノ城(いちのじょう、湊部屋)と新しい力もグングンと伸びてきている。豪栄道といえども、ウカウカできないのが実情なのである。4月6日には28歳の誕生日を迎え、心身両面で充実期にある。まさに“機は熟した”といえる。ぜひ、優勝を手土産に大関昇進という大望を果たしてほしい。久しぶりにドラマチックなVシーンを見てみたいものだ。
(デイリースポーツ・北島稔大)