五輪成功請負人“鉄人”室伏の凄さ

 今年10月には“不惑”を迎える鉄人が、五輪、世界選手権の金メダルと並ぶ金字塔を打ち立てた。6月に行われた陸上日本選手権男子ハンマー投げで室伏広治(39)=ミズノ=が、前人未到の20連覇を達成。強い雨が降りしきる中でも持ち前の技術を駆使し、2位に6メートル以上の差を付ける完勝で、不変の強さを見せつけた。

 「五輪、世界選手権に勝つことに近い、価値のある20連覇だと思う」。

 初優勝から19年。衰えを知らない息子にスタンドから見つめた“アジアの鉄人”と呼ばれた父重信氏も「20連覇は投てき競技でも難しい。傑出した才能がないと。誰も超えられない」と、衰え知らずの息子に目を細めた。

 すべてのことを競技に生かし、モチベーションに転換する思考こそ、室伏が現役を続けられる理由だ。これまでアスリートと中京大准教授という研究者の“2足のわらじ”を履きながら、競技を続けてきたが「常に相乗効果があって、自分の中でポジティブなものがある」。運動力学の他、アンチエイジングや、脳科学なども取り入れながら、投網練習や、赤ちゃんのハイハイの動きからヒントを得たバランストレーニングなど、斬新な練習法を編み出し、自らの進化に繋げてきた。

 そして、現在は20年東京五輪の組織委員会理事の顔も持つ。20日には選手の意見を大会運営に反映させるスポーツディレクターへの就任も発表された。この“3つ目のわらじ”もまた新たなモチベーションになっている。「今回1番変わったのは、大会の運営や時間、タイミングを気に掛けるようになったこと。20年まですべてが予行演習。そうすると選手でやっていないと分からないことがたくさんあるから」。

 雨が降り続いた今回の日本選手権。当初、投てきや跳躍種目では選手が芝生の上で雨に濡れながら整列し、選手紹介が行われていた。それを見た室伏は、運営側に観客席に見えやすく、雨に濡れない場所への変更を助言した。「芝生も痛むし、シューズも濡れてしまうといいパフォーマンスを発揮することは難しくなってしまう。それは選手の立場でないと分からないので。『おもてなし』であれば、細かい配慮が必要ですから」と現役選手ならではの視点で、東京五輪に向けての日本が取り組むべきことに目を向けている。

 20年五輪まであと6年。現在は体と相談しながら「半年区切り」で目標を立て練習スケジュールを組んでいる。進退については「来年の保障があるか分からないから」としながらも「できる限りは頑張りたいと思っている」と話す。開催地決定の際には「心揺らぐものがある」と話していた。常識を覆し続ける“鉄人”。ひょっとしたら45歳で自らが演出した夢舞台に立っているかもしれない。

(デイリースポーツ・大上謙吾)

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