球宴8人選出の野村監督の複雑な胸中
鯉戦士が球宴を赤く染める。マツダオールスターゲーム2014(7月18~19日)のファン投票最終結果が6月27日に発表され、広島からは8選手が選出された。09年の5人(大竹、石原、栗原、東出、赤松)を上回り、球団史上最多。チームは開幕から快進撃を続け、4月11日から6月7日まで首位に立った。「カープ女子」が全国区に広がるほどの人気に後押しされた。
野村監督は「すごいとしか言いようがない。チームにとって明るい材料。選ばれて出るんだから、力を発揮してほしい」と目を細めた。その一方で「2軍の選手もいるからね…」と、少し申し訳なさそうに話した。
同一球団から過去最多、9人が球宴に選出された03年の阪神と比較すると、野村監督の複雑な胸中をうかがい知ることができる。03年は7月3日にファン投票最終結果が発表され消化試合数は当時の阪神が73、今年の広島が67。ファン投票選出選手の、発表日においての成績は以下の通りになる。
【14年広島】
▽投手(先発)前田…13試合7勝4敗、防御率2・22
▽投手(中継ぎ)一岡…23試合1勝2セーブ12ホールド、防御率0・78
▽投手(抑え)ミコライオ…18試合12セーブ3ホールド、防御率1・04
▽一塁 キラ…48試合、打率・276、7本塁打20打点
▽二塁 菊池…67試合、打率・323、5本塁打27打点
▽三塁 堂林…28試合、打率・255、4本塁打15打点
▽外野 丸…67試合、打率・281、8本塁打29打点
▽外野 エルドレッド…66試合、打率・291、23本塁打67打点
【03年阪神】
▽投手(先発)井川…15試合10勝3敗、防御率3・10
▽捕手 矢野…73試合、打率・352、9本塁打47打点
▽一塁 桧山…67試合、打率・261、11本塁打38打点
▽二塁 今岡…73試合、打率・357、5本塁打43打点
▽三塁 アリアス…60試合、打率・258、18本塁打46打点
▽遊撃 藤本…63試合、打率・309、0本塁打23打点
▽外野 金本…73試合、打率・297、10本塁打46打点
▽外野 赤星…73試合、打率・344、0本塁打24打点
▽外野 浜中…55試合、打率・273、11本塁打48打点
会見の様子も両チームでは対照的だった。阪神は脱臼した右肩の手術を控える浜中(その後出場辞退)を除く、8人が会見に臨んだ。一方の広島は故障で2軍調整中の一岡と堂林、不調で降格しているキラを除く、5人での会見だった。
会見に出席しなかった選手の成績を比較しても、浜中は発表時点でチーム最多打点を挙げ、首位を独走していたチームに貢献した。一方の広島も一岡は23試合に登板し、ファン投票2位・山口(巨人)の27試合登板と比べて遜色はない。ただ、堂林とキラは試合数が少なく、物足りなさは否めない。
また、リーグ最多得票に輝いた丸は「自分でいいのかな、という気持ちはある。この数字に恥じないプレーをしたい」と話す。03年の最多得票は今岡で、発表時は打率1位だった。その成績と比べると、丸が謙虚に話すのも無理はないだろう。
ただし、今回のファンの盛り上がりは、23年ぶりのリーグ制覇を目指すカープには大きな後押しになるはずだ。03年の阪神は、独走で18年ぶりのリーグ制覇を遂げている。堂林は「ファンの方々に選んでいただき、驚きもありますが感謝しています」とコメントした。ナイン一丸となって悲願を達成することが、今回のファン投票選出に対する、最高の恩返しになる。(デイリースポーツ・山本鋼平)