桐生 20年東京“ポスト”ボルト参戦

 日本時間24日に行われた陸上の世界ジュニア選手権男子100メートル決勝で桐生祥秀(18)=東洋大=が、10秒34で3位に入り、同種目シニア、ジュニアを通じて世界大会で日本人初のメダルを獲得した。

 決勝では桐生を除く7選手全員が黒人選手。その中でスタートから60メートルまでは先頭に立つ果敢な走りを披露。最後は米国選手2人に交わされたが、6月の日本選手権後には右足底部の炎症で走れない時期もあり、万全ではなく、準決勝では股関節を、決勝ではレース中、両足がつるというアクシデントもありながらの堂々たる走りだった。この日で20年東京五輪開幕までちょうど6年。その夢舞台で主役を争うであろう世代の中で、メダルという形で確かな存在感を示した。

 ただ、金メダルを目指していただけに「準決勝がギリギリで通過だったので、不安だったけど、やるしかないと思っていた。メダルが取れてホッとした」と充実感を漂わせながらも「大会前の目標は金メダル。一番いい色のメダルが獲れなくて、少し悔しさがある」と、素直に悔しさを口にした。

 今春から東洋大に進学し、土江寛裕コーチとともに20年東京五輪でのファイナル進出、メダル争いを目標に挙げ、歩み始めた。当然、そのライバルとなる同世代の選手は気になる存在だ。今大会銀メダルのトレイボン・ブロメル(米国)は、6月に史上最年少で9秒台(9秒97)をマーク。追い風参考ではあるが9秒77を記録したこともある。「身長は一緒ぐらい。平均して速い」と、今大会の前から意識していた相手だった。土江コーチも「(9秒台を出した時に)僕より先に知っていた。気にしているところはあると思う」と話す。そのブロメルとは準決勝、決勝と対戦し、ともに後塵を拝したが、完調ではない中で十分に渡り合った。同コーチは「ブロメルともいい勝負ができた。場数を踏めば世界で勝負できる」と、手応えを口にした。

 スプリンター不毛の地と言われた日本に、ついに誕生した世界に通用するスプリンター。このまま順調に成長すれば、日本人初の9秒台はもちろん、世界選手権、五輪での日本人初のファイナリスト、メダル獲得も夢ではない。「陸上を初めてまだ7年。あと6年。ここからどれだけ成長できるか」。現在、人類最速の地位に立つウサイン・ボルト(ジャマイカ)は、16年リオデジャネイロ五輪後の引退を示唆している。始まった“ポスト”ボルトを巡る争い。その中の1人に間違いなく“KIRYU”の名はある。

(デイリースポーツ・大上謙吾)

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