前王者細川、ご祝儀のためにも再戴冠だ

 一握りの世界王者を除けば、稼げる職業ではないのがボクサー。日本王者クラスでは当たり前のようにアルバイトをしている。ただ強い男に女性はひかれるのも世の常。奥さん、彼女が美女ぞろいなのもボクサーだ。

 「結婚が決まったのでぜひ来て下さい」。幸せいっぱいに言う前日本スーパーウェルター級王者・細川貴之(29)=六島=を、大阪市中央区の結婚式場「大阪セントバース教会」に訪ねた。

 行ってみると、いかつい風貌の細川の隣には女優・武井咲似の和風美女。婚約者の香さん(29)がヘアメークアーティストの仕事をしている同式場で10月13日、2人は結ばれるということだった。

 まさに美女と野獣の2人。関西在住の方なら知ってる方もいるかもしれない。昨年、テレビでサプライズ企画があり、細川は大阪市内の公園で「一緒に王者を目指して結婚しよう」と香さんから、まさかの逆プロポーズを受けた。昨秋には細川がリング上で「香、結婚しよう」と宣言した。

 昨年クリスマスには母の婚約指輪をリメークして香さんにプレゼント。そして3月、日本王座を戴冠と2人の約束は果たされ、晴れて結婚が決まった。

 作家・東野圭吾も卒業した大阪府立阪南高校の同級生だが、高校2年時に留年した細川が1学年上。香さんは「話したこともなかった。金髪で怖い人と思っていた」と当時を振り返る。

 交わるはずのない2人だったが、卒業後、知人を通じ連絡先を交換。香さんは試合の度に励ましのメールを送った。3年前、「会ってみたら怖くなかった」と交際に発展した。

 一体どこにほれられたのか。取材中も「鼻毛が出ている」と注意を受ける細川。同居する自宅では「洗面所を汚したらきちんと拭いて」。「肘を付いてご飯は食べない」。「人前ではきちんと話して」など、子供に教育するかのように言われっぱなしの毎日だ。

 試合前、いつも弱気になると「下を向いても仕方がない。するしかないでしょう」とカツを入れられる。普段は突っ込みどころ満載だが「リング上は別人のようにかっこいい」と香さんは目を輝かす。ギャップが女心をくすぐるようだ。

 細川は今も2つのアルバイトを掛け持ち。本来ならベルトを巻き結婚式に臨む予定だったが、右目の網膜裂孔により王座を返上。無冠のままではご祝儀に影響が出る。六島ジム枝川孝会長からは「半分やな」と、減額を示唆された。「必ずもう1回、ベルトを巻くのでよろしくお願いします」と、新妻とともに、再戴冠分の“前倒し”を訴えた。

 王座を明け渡した王者・野中悠樹(渥美)には年内に挑戦したい意向だ。「香がいつも前向きに言ってくれるから助かる。ご飯も考えてくれて、何でもおいしい」と新妻のためにも結婚後、初試合に負けられない。

 元2階級王者・長谷川穂積(真正)の泰子夫人もテレビで恐妻ぶりを知られ、元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者・石田順裕(39)=グリーンツダ=の麻衣夫人も鬼嫁キャラ!?が定着。しっかり者の伴侶は飛躍への条件。IBF世界同級12位にもランクする細川も世界へ羽ばたけるか、香夫人の手腕にかかる。

(デイリースポーツ・荒木 司)

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