代打大田を決断した巨人ベンチ内では…
敵地での広島3連戦に勝ち越し、マジックを一桁の8に減らした原巨人。2位に6ゲーム差をつけ、リーグ3連覇は目前の状況となった。9月は11勝4敗。首位の座を争う阪神に3勝、広島に5勝1敗。土壇場での勝負強さが際立っている。
広島に引導を渡した17日の試合は、その勝負強さが詰まっていた。初回に先発の沢村がいきなり4失点。直後の二回に小林の適時二塁打などで4点を奪い返した。中盤もリードを許しては追いつき、6‐7の八回には代打・大田の2年ぶりとなる本塁打で勝負を決めた。
大田を代打に送った場面。ベンチには長打のあるロペス、勝負強いベテラン・井端も控えていた。村田打撃コーチは「ロペスと井端が用意してます」と進言。だが、指揮官の判断は違った。「そうだな。(大田)泰示でいこう」。同コーチは「ええっ」と仰天の表情を浮かべたという。「足も速いし、一発もある。ダブルプレーもない」というその起用意図に、伸び悩んでいた大器が応えた。
二回は2点を返しなお1死二、三塁で沢村をスパッと代え、代打・アンダーソンを起用。「2死なら沢村のまま、1死ならアンダーソンでいこう。そういう光景がパッときた」。助っ人は指揮官の“予感”を体現する同点打。六回には江柄子の代打・矢野が適時打を放ち、この日は代打3人がすべて打点を挙げた。
チームの代打成績はリーグ5位の・244。だが、代打の打点となると、同2位の45打点を記録する。故障者が続出し、外野手不足に陥った8月。「しんどかったよな。隠善とかが頑張ってくれた。代打なんか1人もいなかったんじゃないか」。苦境を乗り越えた9月。チームが勝負どころに強いのは、こんな数字にも表れている。
チーム打率はリーグ最下位、総得点は同5位。今季ここまで打線の派手な爆発はほとんど見られていない。だが、指揮官の勝負手に選手はことごとく応えた。チーム全体に、ここぞの勝負強さが浸透している。
(デイリースポーツ・野畑圭司)