カープ一筋 横山は最後まで「向上心」

 広島・横山竜士投手が、今季限りでの現役引退を発表した。体に限界を感じ、本来の投球ができなくなったことを引退の理由に挙げた。カープ一筋20年。闘志を前面に押し出した投球で主に中継ぎとしてチームを支えた右腕が、ついにユニホームを脱ぐ。

 引退会見の席上。横山が強調したのは「向上心」だった。

 今年の春季キャンプ。忘れられない言葉がある。入団当時から横山を見続けてきた野口チーフトレーナーの言葉だ。「ヨコは年齢を重ねてきたけど、技術の高さや練習に打ち込む姿勢は若手のどの選手にも負けていない。それがアイツのすごいところ」

 今年で38歳。投手陣の中では最年長だ。別メニュー調整してもおかしくはない。だが横山は若手に混じりランニングやダッシュなど同じメニューを黙々とこなした。その姿に35歳の久本は「横山さんがあれだけ一生懸命やっていたら、僕らも手が抜けない」。一切妥協しない姿に大きな刺激を受けた。

 直球と大きく曲がるカーブ、スライダー、そしてフォークが右腕の武器だ。昨季からは新たにチェンジアップを覚えた。打者のレベルが上がり、フォークが見切られるようになった。だからこそ直球に近い変化球を覚えた。「1年でも長くやる」ために。

 プロ20年の歴史はケガとの戦いでもある。99年に右肩のルーズショルダーを発症。11年には腰のガングリオン切除手術を受けた。それでも「ケガ前よりもいいパフォーマンスができるようにと思ってやってきた」。故障し本来の投球ができない。そんなもどかしさを、新たな力に変えた。

 ヤンキースで活躍する2学年上の黒田。「彼の存在にも刺激を受けたのではないか」と野口チーフトレーナーは言う。広島時代は仲がよく、練習を共にした。私生活では当時、エコカーに乗っていた横山に対し黒田が「そんなのに乗るな」(プロ野球選手は夢を与える職業という思いがあったため)と、冗談めかして言ったこともある。今季は5年連続で2桁勝利をマークした。年齢を重ねても進化し続ける黒田が、目標の1つになっていたのかもしれない。

 引退会見の最後、横山は後輩に向けメッセージを残した。「1年でも長く現役を続けられるように、向上できるように頑張ってもらいたい」。通算507試合登板は球団5位。背番号23が、投球と同様に熱い言葉を贈った。

(デイリースポーツ・市尻達拡)

関連ニュース

これも読みたい

    あとで読みたい

    編集者のオススメ記事

    コラム最新ニュース

    もっとみる

      あわせて読みたい

      ランキング

      主要ニュース

      リアルタイムランキング

      写真

      話題の写真ランキング

      注目トピックス