凱旋門賞の位置取り…馬の育て方に違い
過去に2着が4回。日本競馬の悲願とされてきた凱旋門賞が、日本時間の5日午後11時半にスタートした。今年は日本から史上初めて3頭が参戦。いずれも国内トップ級の強豪だが、ハープスター6着が最上位。ジャスタウェイは8着、ゴールドシップは14着に終わり、またしても欧州の壁にはね返された形だ。
馬場状態は10段階で4番目に硬い“BON”。日本馬向きの高速ターフで行われ、前半7Fは1分28秒00のスロー。後半3Fは11秒81→10秒97→11秒67=34秒45の完全な瞬発力勝負となった。序盤は後方4、5頭のうち、3頭が日本勢。厳しい展開を強いられた。
ジョッキーに対し「もっと積極的な競馬ができたのでは」、「外ではなくインを突くべきでは」という声はあるだろう。実際、海外の関係者からも同じような意見が聞かれた。間違っているとは言うまい。ただ“正しい”とは思わない。
タイトで馬をぶつけ合う欧州。対して日本は実にクリーン。馬に求められる資質も当然異なる。欧州は肉弾戦に耐えうる精神力の高さが必須。日本ではスピードと切れが重要視される。一言で言えば同じ競馬でも別の土俵。必然的に馬の育て方に違いがある。これはどちらがいい、強いという話ではない。伝統であり歴史の違いだ。
前記した“正しい”とは思わない理由。それは序盤から内ラチ沿いの激しいポジション取りに参加し、なおかつ体力を消耗せずに運べる精神力が通常の日本馬に備わっていない。直線で他馬を吹き飛ばす習性も当然ない。騎手が“やりたくてもやれない”。これが正解ではなかろうか。
象徴的なシーンがある。08年凱旋門賞。日本ではタフネスぶりを評価されていたメイショウサムソンが馬群でもまれて早々と脱落する一方、勝ち馬ザルカヴァは周囲を蹴散らしながら抜けてきた。日本と欧州の差が出た一戦として記憶している。
外をブン回しても差し切れるスーパーホース、またはヨーロッパの馬群でもひるまず先行できる超勝ち気な馬。日本から連れて行くなら、恐らく現時点ではこの2タイプが最も勝機を持っているのではないか。今年は残念ながら該当馬がいなかったと判断せざるを得ない。
それでも騎手を含め純粋な“チームジャパン”として挑んだ今回の遠征は、ファンのみならず記者のハートも熱くさせた。とにかく今は3頭の陣営に「お疲れさま」とねぎらいの言葉をあけてあげたい。
(デイリースポーツ・豊島俊介)