徳島 補強が遅れ“トリプル40”夢散
四国初のJ1昇格を果たしながら、開幕から最下位を走り続けた徳島ヴォルティス。10月22日の第29節・C大阪戦で敗れ、わずか1年でのJ2降格が決定した。
第31節を終え、3勝4分け24敗の勝ち点「13」。得点はわずか「15」で失点は「71」。開幕前に小林伸二監督が目標として掲げた「40得点、40失点、勝ち点40」の“トリプル40”には遠く及ばない数字が並ぶ。リーグ戦は残り3試合となったが、いまだホーム初勝利をサポーターに届けられていない。
昇格の高揚感に包まれていた今年1月、新加入選手が発表された時点で厳しいシーズンになることはある程度予想できた。
MF小島(浦和から期限付き移籍)、MF小暮(C大阪から期限付き移籍)ら新加入6選手の平均年齢は21・5歳。小林監督は「若手の運動量に期待した」と補強の意図を説明した。スピードや技術に優れる将来有望な若手たち。しかし、経験不足のデメリットに対する不安を感じずにはいられなかった。
そして開幕戦。若いパワーで挑んだ徳島は、鳥栖に0-5の惨敗。指揮官が「度肝を抜かれた」と語るほど力の差を見せつけられた。選手たちはショックから立ち直れず、リーグワーストタイの開幕9連敗。おびえたようにパスを回し、ミスを繰り返した。
降格決定が間近に迫っていた時期、中田仁司強化部長(10月31日に退任発表)は「プレーオフが終わってからだと動きが遅くなる。そういう部分はあった」と、チーム編成で遅れを取ったことを暗に認めた。徳島は昨季J2で4位に入り、プレーオフを勝ち上がって悲願の昇格を果たした。京都との決勝戦を制したのが12月8日。そこから“J1仕様”の戦力を整えるには時間が足りなかったということか。
W杯中断期間に清水からDF村松、元コロンビア代表MFエステバン、ブラジル人FWアドリアーノを補強。リーグ再開後の夏場に2勝を挙げるなど一定の効果は見られたが、それでも“時すでに遅し”の印象が拭えなかった。
クラブにとって歴史的なシーズン。惜しいことに、本拠地の鳴門・ポカリスエットスタジアムではバックスタンドの改修が行われていた。もちろん何年も前から計画されていたことで仕方ないのだが、環境面でもJ1クラブとして“未完成”の感が色濃くにじんだ。工事中の観客席の下で力なくうなだれる選手たち…。そんな風景を記者席から見るたびに、「昇格は早すぎたのか…」と思わずにはいられなかった。
ただ、得たものも少なくない。「J1での経験はクラブにとって貴重な財産。決して無駄にはならない」と新田広一郎社長は語る。
同社長によると、徳島は昨年比で平均入場者数が約4300人、ファンクラブ会員数が約4500口、スポンサー・法人企業が約240社も増加。昇格効果で収入が大幅にアップしたことを挙げ「今度昇格する際には必ずJ1に定着できるように、クラブの経営規模も含めて土台をより強固なものにしていく」とクラブHPにメッセージを寄せた。
鳴門の渦潮は消えたように見えても、再び大きなパワーを得て大海原に巨大な渦を巻く。J2に戻る来季、目指すは1年でのJ1復帰だ。今度は対等に戦えるJ1クラブになるために、じっくり準備を進めてほしい。(デイリースポーツ・浜村博文)