ロッテあえての内野手指名で早大・中村
ロッテは今秋のドラフトで、早大・中村奨吾内野手を単独1位指名した。今季はチーム防御率がリーグワーストの4・11に沈んだだけに、即戦力投手の指名が有力視されたが、選んだのは大学No.1内野手だった。
昨季は巨人が一本釣りすると思われた石川を電撃指名した挙げ句に引き当てるなど、例年“サプライズ”が多いロッテのドラフト。今季は、チーム成績を単純に考えれば投手の補強が最優先事項のように思われたが、あえての内野手指名という戦略に出た。
編成トップの林球団本部長は、「通常ならば投手を優先するところだが、それを抑えてでも取りたい野手がいたということ。チームを長い目でみれば、野手が必要だった」と舞台裏を明かした。スカウトの間には「投手の場合は毎年、必ずいい選手が出てくるが、野手の逸材というのは、そう毎年のようには出てこない。出てきた年に確実に取らないといけない」という“定説”がある。
今年は、その“毎年のようには出てこない”野手が2人いた。俊足巧打と堅実な守備がアマトップレベルの中村と、10年に1人の逸材と言われた右の大砲、智弁学園・岡本(巨人が単独1位指名)だ。例年以上に即戦力投手が市場に“品薄”だったことからも、ロッテは早い時期から、彼らに狙いを定めたという。
会議当日まで岡本と迷ったが、即戦力ということと、俊足の内野手が少ないというチーム事情で、中村に決めた。熱視線を送り続けてきた松本編成統括は「向こう10年、レギュラーを任せられる選手」と惚れ込む。
現在のロッテの内野の布陣を考えると、三塁の今江、遊撃の鈴木のほか、今季の二塁は主に助っ人クルーズが務めた。内野の要だったベテランの井口が一昨年に一塁へコンバートとなって以降、二塁の定位置を日本人で固定できていない。
年齢的なバランスを考えても、長年、不動のレギュラーを張ってきた今江も、来年32歳。投手の補強も重要だが、将来的なビジョンに立って考えると、巧守で軸となり得る内野手の獲得は、急務だったといっていい。
伊東監督は、中村について「うちには足のある内野手は少ないから非常に魅力的。二塁だけでなく、他のポジションも守れる」と期待を込める。ロッテのあえてのドラフト戦略が、来季以降、どのようにチームに効果をもたらすか、楽しみだ。(デイリースポーツ・福岡香奈)