“すべらない”ボクサーかけた戦い

 ボクシングの日本ヘビー級は“場外舌戦”にも注目だ。元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者で日本ヘビー級1位の石田順裕(39)=グリーンツダ=が同級日本王者の藤本京太郎(28)=角海老宝石=に対し、「フランケン敗れたり」と不敵に予告した。

 因縁の始まりは昨年11月にさかのぼる。本来のミドル級から20キロ増量し4階級も上のヘビー級に転向。「現役最後にアホなことをしたい」との思いに応えた京太郎と4月にノンタイトル戦で戦った。

 微妙な判定の末、敗れ、1度は引退を決意。だが判定に納得がいかない石田は現役続行を宣言し、日本タイトルをかけての再戦を訴えた。麻衣夫人まで登場し、「京太郎、逃げるなよ」と挑発。「京太郎のお母様に対戦をお願いする」と、家族を巻き込んで石田側は仕掛けまくった。

 交渉が進む中、京太郎陣営も黙っていなかった。9月に驚がくの声明文を発表した。

 (1)4月の対戦時よりパンチ力が約3倍増している(2)石田戦はTV放送できないほどせい惨な試合になる(3)どうしても対戦するなら高額の生命保険加入を-が主な内容。萩森健一マネジャーは「フランケンシュタインを創造した博士の気分」と京太郎を怪物に例えた。

 「パンチ3倍か…、人間じゃないのか」とグリーンツダの本石昌也会長。石田はミドル級の怪物王者・ゴロフキン(カザフスタン)にボコボコにKOされた経験を思い出し「びびりまくってます」と半笑いで震えた。

 東京からの“笑撃”カウンターに真剣に“ボケ”てこそ関西人。会長と石田はさっそく「人造人間対策」に入った。ネットで「フランケンシュタイン 弱点」と検索。「頭が悪い」と出てきた。「そこは石田もたいがいやからな。(頭では)五分」と会長と嘆いた。

 さらに「また縫われる恐怖があるから針と糸」とあった。しかし、リングに針を持ち込めば反則負け。解決にはいたらなかった。

 幸い、対策期間はある。当初は大みそか、京太郎に挑戦する予定だったが延期。日本タイトル前哨戦として12月27日に大阪・住吉区民センターで同級2位・竹原虎辰(緑)と対戦することになった。

 石田は17日からロスで約1カ月の合宿を張る。本場のヘビー級ボクサーとスパーリング漬けの日々で、「フランケン・パンチ」への耐久力を付ける。さらに「西洋の怪物なので、アメリカに行けばヒントがあるかも。ハリウッドも近いですし、フランケン攻略のための旅に出ます」と、現地で人造人間の情報収集をするプランを本気で練っている。

 京太郎は9月に竹原を5回TKO。石田は「5回以内に仕留めないといけない」と自らノルマを課した。京太郎破りの豪快デモを行い、4月の「チャンピオンカーニバル」で再戦、が描く青写真だ。

 「注目されてナンボなんでね」と本石会長。試合以上にプレッシャーのかかる“すべらない話”の応酬は望むところ。フランケンシュタインを超える怪物パンチの完成なるか-。日本最強に加え、“日本一すべらない”ボクサーの称号をかけた戦いになる。

(デイリースポーツ・荒木 司)

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