神宮大会で光った来秋ドラフト候補たち
学生野球シーズンの最後を飾る明治神宮大会は、高校の部を仙台育英が、大学の部を駒大が制して、11月19日に幕を閉じた。今年のドラフト会議は10月23日に終わったばかりだったが、神宮では早くも来秋の候補となりそうな原石たちが、随所に光るプレーを見せていた。
高校生で、スカウト陣の注目度と評価が特に高かったのは、仙台育英の平沢大河内野手だ。「3番・遊撃」で全3試合に出場した右投げ左打ちのスラッガーは、2年ぶりの優勝に貢献した。強烈なインパクトを残したのは、決勝の浦和学院戦で放った2ラン。逆風の中、弾丸ライナーで右中間最深部にたたき込んでみせた。
高校通算10本塁打ながら、あるセ・リーグ球団のスカウトは「スイングスピードの速さは高校生トップクラス。パンチ力があるし、広角に打てる。東北ではNo.1」と言い切った。守備面では、肩の強さを買われていた。
東海大菅生の勝俣翔貴投手は、投打両面で活躍した。準々決勝の静岡戦では、右中間への同点ソロと11奪三振の完投勝利。「しっかりミートできるし、ボールの見逃し方がいい。センスを感じる」(パ・リーグ球団スカウト)と高校通算14発の左の強打者として評価する声に加え「いい縦のスライダーがある。みんなタイミングを崩されているから、相当ブレーキがかかっているんでしょう」(セ・リーグ球団スカウト)と、最速142キロの本格派右腕としても、マークされている。
スペシャリストとしては、天理の舩曳海外野手。一塁到達タイムが4秒を切る俊足が最大の武器で「めちゃくちゃ速い。あの足でメシを食っていける」(セ・リーグ球団スカウト)と、プロをうならせた。足だけでなく、広角に打ち分ける左の好打者だ。
今夏甲子園には出場していなかった顔ぶれでは、3試合を1人で投げ抜いて胴上げ投手となった仙台育英の最速144キロ右腕・佐藤世那投手、東海大会で2戦3発を記録した右の長距離砲、静岡の安本竜二内野手の名前が、スカウト陣から挙がった。
大学生はすでに名を知られている選手が多かった。来年のドラ1候補に数えられる駒大の最速148キロ左腕・今永昇太投手、東京六大学リーグ史上初めて3年生で通算100安打を達成した明大・高山俊外野手、今大会で自己最速を2キロ更新する151キロをたたき出した富士大の右腕・多和田真三郎投手らだ。
その中で新たに“全国区”の仲間入りを果たしたのが、東農大北海道オホーツクの右腕・井口和朋投手。140キロ台前半で空振りを奪える直球は、キレとコーナーへの制球が出色。ヤクルトにドラフト2位指名されたエース・風張蓮投手が右太もも裏痛を訴えて初戦で離脱した穴を見事に埋め、4強入りの立役者となった。セ・リーグ球団のスカウトは「いい投手ですよ。十分、来年のドラフト候補になる」と、印をつけた。
もちろん、明治神宮大会に出場できなかったチームにも、好素材は数多い。ひと冬を越えた来春、どんな姿を見せてくれるのか。まだ見ぬ新星の登場も含め、選手の成長を楽しみに球春到来を待ちたい。
(注)候補選手はすべて、高校生は2年生、大学生は3年生。高校通算本塁打数は、神宮大会終了時点。
(デイリースポーツ・藤田昌央)