広島・九里 秋季異例の2000球超え
来季へ掛ける強い思いが感じた秋季キャンプだった。広島・九里亜蓮投手が初日から連日ブルペン入り。球数は投手陣トップの2026球だった。
近年では珍しい投げ込みだ。秋季キャンプはシーズンの疲労を考慮し、投げ込まない選手が多い。その中で2000球超えは異例と言ってもいい。「投げて体に染みこませていこうと思った。球数?気にはしていないですよ。肩も大丈夫」
シーズンで出たフォームの課題を克服するためだった。投球後に体が一塁側に傾いていた。シーズン中、何度も修正を試み、修正できたときがあった。だが、それが本当に自分のものにはなっていなかった。力みもそうだ。リリース時にだけ力を入れることを理想とするが、投球始動直後から力が入った。新人だった今季は20試合に登板し2勝7敗。防御率4・00と満足できる成績は残せなかった。
投げ込みによるフォーム修正に、この秋から2軍投手コーチに就任した佐々岡氏は、何度もうなずいた。自身は現役時代、1日300球を投げたことがある。それだけに「昔の話と言われるかもしれないが、投げ込まなければ分からないことがある」と力を込めた。
「疲れたときからが本当に自分のフォーム。そのときには上体だけではいい球がいかない。疲れたときこそ、下半身と上半身を連動させて投げないといけない。そうやっていいフォームは身につくと思う」。現役時代先発100勝100セーブを挙げた佐々岡2軍投手コーチ。その経験を元にしているだけに、その言葉は重い。
秋季キャンプ最終日の11月21日、九里は「体がバリバリです。明日はちょっと休ませてもらいます」と、初めて本音をもらした。それまでは「大丈夫です」を連呼してきた男がだ。だが、その言葉が実りの秋であったことの証明だ。緒方監督も「キャンプで一番、頑張って選手。来季へ期待できる」と賛辞を送った。
同期入団の大瀬良は、26試合で10勝8敗。防御率は4・05ながら、2桁勝利が評価され新人王を受賞した。刺激し合いながら戦ってきたチームメート。祝福しながら、やはり悔しさがこみ上げた。「悔しい気持ちは、もちろんある。来年は負けないように頑張りたい」。反骨心も大きな原動力に変える。九里が来季の開幕先発ローテ入りを目指す。(デイリースポーツ・市尻達拡)