“宇宙人”糸井 来季主将指名の理由は

 球界の“宇宙人”、オリックスの糸井嘉男外野手(33)が、森脇浩司監督(54)から来季の主将に指名された。

 「納会で監督に呼び出されて、何やろ?と思っていたら『キャプテンになってくれ』と。うわ~、来た!と思った。今までキャプテンも副キャプテンもやったことがないが、頑張らないと」と張り切っている。

 今季、主将を務めた坂口も「高校時代に主将を1週間でクビになった」という経験がある。しかし「若い選手が多いので、ベテランと若手がまとまれば、すごく強いチームになる」と明るい雰囲気作りに気を配り、見事にチームを2位へ躍進させた。

 森脇監督が主将を指名する理由には「中堅、ベテランの意識が増した時、初めてチームが動く」という、中心選手の意識改革への期待も込められている。糸井に対する期待の表れだろう。

 糸井自身、努力する姿を人に見せるタイプではない。今季は右脇腹や左膝にケガを抱えながら、首位打者を取った。全体練習とは別メニューで、必死に室内練習場で打ち込んでから試合に臨むことが多かった。人知れず練習を重ね、グラウンドでは力一杯のプレーでチームを盛り上げる。

 糸井の近大時代の恩師で近大前監督の榎本保氏は、糸井について「面白い発言が取り上げられて“宇宙人”なんて呼ばれていますが、実は相手の気持ちを察し、自分の面白さを掛け合わせて場を和ませる天才なんです」と話している。

 榎本氏はこう続けた。

 「糸井が学生だった頃の話です。ある試合でチーム成績が悪く、私はカンカンに怒っていました。思わず糸井を殴るポーズをしてしまったのですが、なんと糸井は振り上げた私の手に自分の手を重ね、ハイタッチしてきたのです。私も何か分からないままハイタッチしてしまい、頭に来ていたことさえ忘れて冷静に戻りました」

 後輩の面倒見も良く、点呼に遅れた後輩をかばい「タクシーが遅れたみたいです」と、わざわざ榎本氏の部屋へ弁解に来たこともあったという。

 来季は日本ハム時代の同僚だった小谷野栄一内野手や、交流のある中島裕之内野手が加入。頼りになる兄貴分という主将像が浮かんでくる。

 糸井にとって理想の主将は、日本ハム時代の先輩・稲葉篤紀氏だという。「後輩の僕らはプレーしやすかったし、気持ちを熱く持たせてくれた」と、技術、精神面で柱として活躍したレジェンドを目指す。

 「去年は坂口や平野恵さんに引っ張ってもらい、みんな心も体もひとつになれた。引き続き、チームをいい方向へ持って行けたら」と表情を引き締めた。

 今季はソフトバンクと激しく優勝を争ったオリックス。この経験とオフの大補強で、ペナントは手の届くところにあるはず。坂口前主将に続き、糸井新主将がチームの追い風を加速させる。

(デイリースポーツ・中野裕美子)

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