黒田の復帰でマエケンはさらなる高みへ
広島は27日、黒田博樹が8年ぶりに復帰することを発表した。これにより前田健太投手との先発二枚看板が形成された。2年連続3位だったカープは、15年シーズンで優勝候補の一角に躍り出た、といって過言ではないだろう。
前田26歳。黒田39歳。13歳差という年齢以上に、2人は対照的だった。
前田は今季オフにポスティング制度を利用した大リーグ移籍を目指しながら、今季成績は11勝9敗、防御率2・60。勝負どころで白星に見放され、5年ぶりに無冠に終わった。球団から「皆が気持ち良く送り出す形にしたい」と、ポスティング申請を見送られた。
一方の黒田は、大リーグ・ヤンキースをFAとなり、複数球団の巨額オファーを蹴って、年俸4億円プラス出来高で8年ぶりの復帰を決めた。今季はヤ軍で11勝9敗、防御率3・71。大リーグ一線級の実力ながら、異例の日本復帰を決断した。
1年でも早く、と大リーグ挑戦を意識している前田に対し、黒田は引退も選択肢に入れながら復帰を決めた。
24日に球団史上最高の年俸3億円でサインした前田は、わずか3日で球団最高年俸の座を譲り渡したことになる。それでも、この新旧エースのそろい踏みは、前田にとってさらなる高みに立つ契機となるような気がする。
前田は10年に15勝8敗、防御率2・21の成績を残し、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振に輝き、沢村賞を受賞した。このブレーク以降は安定して成績を残し“絶対エース”の座を揺るぎなくした。侍ジャパンでもエース格に成長した。
一方で、11年以降の勝ち星は10、14、15、11。14年1月に「圧倒的な数字を残したい」と話していたが、実は圧倒的な成績はまだ手にしていない。自己最多の勝ち星が15というのは、前田の能力の高さと比べると物足りなさを感じる。
今季本領を発揮できなかった原因を考えたとき、今年の春季キャンプで新球として習得に取り組んだスプリットがあるように思う。過去にも11年の春季キャンプでフォーク習得を目指したが、他球種への影響を懸念して断念。スプリットは入団2年目までは使用していたが、磨ききれず“封印”していた。
ただ、今回のスプリット習得も失敗に終わった。キャンプでの紅白戦やシート打撃での感触は良かったが、オープン戦で納得のいく効果が得られず、開幕前に“封印”せざるを得なかった。
あるコーチは「スプリットを落とそうとしすぎていた。本人にも伝えたが、フォームがややオーバースロー気味になっていた」と、指摘した。
ただ、もし前田がスプリット習得を再び目指すのなら、同じスリークオーターでスプリットを操る黒田はお手本になるだろう。日本人の先発候補で、自身より年上がいなかった前田にとっても、39歳の黒田は謙虚に教えを求められる存在ではないだろうか。
15年オフこそポスティングでの大リーグ移籍を目指す前田。そして1年、1年を完全燃焼するスタイルで、いつ現役を終えるか分からない黒田。カープにとっては15年に優勝を逃すと、16年以降は相当苦しくなってくるだろう。
24年ぶりの優勝を実現するため、既に超一流の前田が黒田を刺激材料にして、圧倒的な右腕へ覚醒するのを願っている。
(デイリースポーツ・山本鋼平)