野球王国・高知で起こっている現状
意外な事実が明らかになった。これまでのセンバツ大会において、都道府県別で最高勝率をマークしている高知県。出場回数58回で歴代6位の89勝を挙げた野球王国に今、少子化の波が押し寄せている。
その事実が明らかになったのは昨年12月、若手指導者の育成を目指して高野連が実施している「甲子園塾」だった。高知県高野連から山崎正明理事長が講師として呼ばれ、地元の現状を明かした。
平成26年度、全国の野球部員は17万312人に増えた。高野連が統計を取り始めて、初めて17万人を越えるなど野球人口は確実にアップしている。その一方、高知県は全国上位の人口減少県。山崎理事長は「郡部の学校が減少しつつある」と警鐘を鳴らす。
加盟35校中、部員が20人未満の学校は実に半数以上の20校。9人未満の学校は8校にも上るという。高知県は平成9年に全国で最初に連合チームを作成するなど、対応に対応を重ねてきた。各学校の意見を聞き、最善の形で連合チームが作れるように施設面などのアドバイスを送ってきた。
だが高知県は高速道路が県内を縦断しておらず、郡部の高校は移動が困難で練習試合を組むのも一苦労。そんな現状もあり、部員は高知市内に集まる一極集中型になっているという。
その結果、県全体のレベルが低下する恐れがある。甲子園を争う予選の質が落ちれば、全国で勝ち抜く力、勢いを養うことはできない。また都市部に一極集中することで、かつて甲子園や地元を沸かせた「おらが町のチーム」も消滅。この問題は高知だけに限らず、少子化の波とともに各地区にも波及するものとみられる。
今年、高校野球は100周年を迎えた。長い歴史の中で、徳島・池田など個性的な地方のチームが大会の歴史を彩ってきた。野球に携わる人間だけでなく、地元の高齢者や子供たちに夢と希望を与えてきた高校野球。地元全体を活性化できる力を持つ希有なアマチュアスポーツ。未来はどう変わっていくのだろうか-。
(デイリースポーツ・重松健三)