東京五輪の星!神戸の17歳SB藤谷壮
ちょっとした驚きだった。22日に北九州市立本城陸上競技場で行われたJリーグプレシーズンマッチ・北九州-神戸で、神戸のネルシーニョ監督は20日に2種登録されたばかりのU-18所属のDF藤谷壮(17)を遠征メンバー18人に選んだ。
今季鳥栖から加入したDF安田理大やDF高橋峻希といったサイドバック(SB)が負傷中ということもあったが、藤谷は鹿児島キャンプにも帯同しており、指揮官の期待の高さがうかがえた。
出番は意外な形で巡ってきた。太腿裏の状態が良くなかった左SB相馬が前半で退き、代わって藤谷がそのまま左SBに入った。「ちょっと緊張しました」と振り返ったように、後半13分には自陣でボールを失い、北九州FW原に決定的なシュートまで持ち込まれるなど、本来のポジションである右SBとは逆サイドでのプレーに、最初はぎこちなさも見て取れた。
それでも持ち味は発揮した。攻撃時にはウイングと見紛うほど高い位置を取り、スピードに乗ってサイドを駆け上がる姿は爽快だった。
試合後、ネルシーニョ監督は「前でプレーする能力のある、勢いのあるSB。ポジションに慣れ、試合に慣れて、自信をつけるいいきっかけになった」と藤谷を評した。
1997年生まれの東京五輪世代で、昨年10月に17歳の誕生日を迎えたばかり。身長178センチと日本人SBとしては長身だが、体重62キロとまだ線は細く、表情にもあどけなさが残る。地元・神戸市北区出身、北五葉SCでサッカーを始め、小学4年で神戸ジュニアに入ってからは神戸一筋だ。
小学時代は主にセンターバック(CB)だったが、U-15に昇格してからはSBでプレーするようになった。中学時代はJFAエリートプログラムに選ばれ、高校生になると各年代別代表に定着。昨年はU-19代表に飛び級で招集された経験も持つ。
神戸市立科学技術高に通う2年生は「中学の時はサッカーでそんなにできると思わなかったので、工業系で就職しようと思っていた」と、意外な人生設計も明かした。
少々気は早いが、順当なら来季はトップチームへ昇格することが確実。小学時代から神戸の下部組織で育った選手のトップ昇格はクラブ史上初。サポーター、スタッフら関係者にとっても大きな喜びとなるはずだ。
着実にステップアップを重ねている藤谷だが、本人はしっかりと地に足を着けている。北九州戦後も「クロスの精度を上げて、1対1にもっと強くならなければ、今後J1では通用しない」と課題を口にした。
また、トップかユース、どちらに軸足を置いてプレーするべきかについても、「(負傷中の)峻希さんが戻ってきた時どうなるか。トップチームでやっていても(練習に混ざれず)端っこではスキルも上がらない。慎重に選択したい」と考えを巡らせている。
好きな選手に元ブラジル代表DFダニエル・アウベス(バルセロナ)を挙げてきたが、「もう目指す選手はいない。その時の監督の要求に応えられる柔軟性のある選手になりたい」。誰かに憧れるより「自分のサッカーを高めていきたい」と表情を引き締めた。
5年後の東京五輪に向けて「それまでにスキルを高め、その時に選ばれるレベルであれば選ばれる」と、特別な気負いはない。2年連続で2種登録された今季、まずはプロデビューを果たすことが目標となる。17歳の成長から目が離せない。
(デイリースポーツ・山本直弘)