あん馬の亀山が狙う“アフロ革命”とは
26日まで行われた体操の全日本選手権。白熱した上位争いとともに、ある男の“異端”ぶりが際立った。体操の13年世界選手権種目別あん馬金メダリストの亀山耕平(26)=徳洲会=。今季から髪型をアフロヘアにした26歳は、決勝では6種目中5種目で演技をせず、あん馬だけを実施。元世界王者は雄大な旋回を披露し、15・650点の全選手中トップの得点をたたき出して、悠然と大会を終えた。
16年リオデジャネイロ五輪を見据え、今季から、あん馬のスペシャリストとして生きていく覚悟を決めたいう。「去年は他の種目もできると、可能性を広げようとしたが、広がらなかった。もう迷うことはない。あん馬一本でもう一度、世界王者になろうと」と、キッパリ。今年の世界選手権代表入りは、チーム貢献度枠(個人総合枠3人との組み合わせで最もチーム貢献度が高くなる3人を選考)で狙っている。だからこそ、全日本の舞台さえも「個人総合は自分の土俵じゃない。自分の土俵に上がるためにやる」と、割り切っていた。同班の選手が他種目を演技中も、ずっとあん馬の動きを確認する姿があった。
競技へのこだわりは、その頭にも込められている。昨年のオフに突然、アフロヘアに変身。全日本前の会見では、熱いアフロ論を展開された。「スポーツは見てもらってこそ価値がある」と話す男は「あん馬は地味でスポットライトが当たりずらい。でも自分が目立てば、あん馬も見てもらえて、その魅力を伝えられる」と、その意味を強調。そして、最後にもう1つ理由を、決め顔で付け加えた。「僕の価値観の中で、アフロが最高に格好いいからです」-。
アフロにしたきっかけは、昨年の世界選手権の際に、テレビで映った米人気歌手のブルーノ・マーズを見て「今やるしかない」と思ったから。ただ、もともとアフロには潜在的な憧れを抱いていたそうで「久保田利伸さんの『LOVE RAIN』という曲で衝撃を受けた。楽しそうに歌うアフロの久保田さんが」と、アフロを魅力をとことんまで語りしつくした。
思わぬ効果もありそうだ。3月のコトブス国際では、一足先にアフロ姿を世界にお披露目。「受けはよかった。会場がずっとざわざわしていた。あの日本人、何?みたいな感じで」と、手応えをつかんだ。エースの内村航平も「僕は(亀山のアフロ姿は)なしだと思うけど」と笑いながら、「印象には残ると思う。『あんなやつが日本にいるのか』って。(16年五輪の)リオでは受けるかもしれない」と、密かに期待を込めている。
オフには「もっと体操を楽しんでみてもらえるように」と、ブログも始め、情報発信にも力を入れている亀山。大黒柱、内村航平の活躍を中心にスポットライトを浴びる機会が増えたとはいえ、まだまだ競技普及へ道半ばの体操競技。1人のアフロジムナストが投じる一石が、体操界に“革命”を巻き起こすか。(デイリースポーツ・大上謙吾)