ヤクルト山田“球聖”以来の記録なるか
前半戦を終えようとしているプロ野球。セ・リーグは歴史的な大混戦が繰り広げられているが、その中でとてつもない夢を抱かせる打者がいる。ヤクルトの山田哲人内野手(22)だ。
14日現在、打率・310(セ・リーグ4位)、19本塁打(同1位)、48打点(同3位)と、打撃3部門すべてで上位につけている。まだシーズンの半ばだが、14年の松中信彦(ダイエー)を最後に日本プロ野球では過去に7人、11度しか達成していない3冠王の誕生を予感させる成績。16日に23歳の誕生日を迎える山田が3冠王になれば、82年の落合博満(ロッテ)の28歳を大幅に更新する最年少記録となる。
それだけではない。盗塁も15でリーグ2位。3冠に加えて盗塁王も獲得となれば、日本プロ野球では史上初、米大リーグの歴史を見ても、“球聖”と呼ばれたタイ・カッブ(タイガース)が1909年に達成しただけの、まさに歴史的な大記録となる。
それでは、山田が3冠王になれる可能性を考えてみよう。若い山田にはこれから何度もチャンスは訪れるだろうが、今季は例年にないチャンスといえる。ライバルが少ないからだ。00年から昨年までの15年はパワーで勝る外国人選手が本塁打王を12度、打点王を9度獲得するなど打撃で圧倒的な成績を残してきたが、今季は各チームの外国人選手が故障や不振などで成績が伸び悩んでいる。運も山田に味方をしているのかもしれない。
ならば、問題はライバルよりも自身が調子を維持できるかだろう。特に、これから本番に入る夏をどう乗り切るか。昨年8月の山田は打率・373、6本塁打と絶好調だったが、9月に入ると、6本塁打を放ったものの、打率は・240と急降下。山田だけでなく、リーグトップのチーム打率を誇ったヤクルト打線も軒並み不振に陥った。
原因は何なのか。当時の小川淳司監督は「8月はドーム以外の試合が多く、(暑い)外での練習を強いられた。その反動がある」と話していた。屋外の球場を本拠地とするチームの宿命とはいえ、昨年の8月は26試合中ドームはわずかに3試合で、今年の8月も同じく26試合中3試合がドーム。厳しい日程だが、昨年の経験を生かしてほしいところだ。秋に歴史的打者が誕生する瞬間を見られるだろうか。
(デイリースポーツ・洪 経人)