リオ五輪世代の東アジア杯代表入り期待
サッカーの東アジア杯が8月1~9日まで中国・武漢で開催される。大会期間は国際サッカー連盟(FIFA)が定める国際Aマッチデーに該当しないため海外組の招集は事実上不可能で、国内組中心で臨むことが決まっている。10日に日本協会から発表された予備登録メンバー50人はJリーグ勢で占められ、海外クラブ所属はMF高萩洋次郎(FCソウル)のみだった。
今回の予備登録メンバーには、16年リオデジャネイロ五輪を目指すU-22(22歳以下)日本代表からもGK櫛引政敏(清水)、DF松原健(新潟)、山中亮輔(柏)、川口尚紀(新潟)、岩波拓也(神戸)、植田直通(鹿島)、MF遠藤航(湘南)、喜田拓也(横浜M)、FW浅野拓磨(広島)の9人が名を連ねている。
U-22代表は7月1日に仙台で行われた国際親善試合U-22コスタリカ戦で2-0の勝利を収めた。球際で激しく戦い、試合途中のシステム変更にも柔軟に対応、守っても5試合連続無失点と収穫の多い一戦となり、手倉森監督は「選手たちが成長しているなという手応えを感じた」と目を細めた。
ただ、U-22代表にとっては、この試合が年内に予定されている最後の公式戦だった。来年1月にカタールで行われるリオ五輪アジア最終予選に向け、10月下旬の九州合宿、12月上旬のカタール遠征で強化試合を計画してはいるものの、実戦不足は否めない。
リオ五輪最終予選はホーム&アウェー方式だった前回のロンドン五輪予選から大きく変わり、U-23アジア選手権が五輪最終予選を兼ねるセントラル方式となった。ホーム&アウェー方式なら試合の度に選手を招集してトレーニングを重ねることもできたが、今回の方式では選手を集める期間も限られ、4年前と比べて代表活動に割ける時間が少なくなっている。
リオ五輪のアジア枠は3。前回のロンドン五輪の3・5枠から減少している。手倉森ジャパンは昨秋の仁川アジア大会(韓国)でベスト8に終わっていることからも、上位3位以内が必要となるU-23アジア選手権が厳しい戦いとなることは想像に難くない。
東アジア杯予備登録メンバー入りしたリオ五輪世代では、植田、岩波、浅野の3人が既に5月のA代表国内組合宿に招集されている。彼らに加えて遠藤らU-22代表の中核を成すメンバーが国際舞台を踏むことができれば、五輪世代にとっても大きな上積みとなるだろう。
もちろん、東アジア杯は単なる五輪世代強化のための大会ではない。A代表は9月以降にW杯2次予選を控えており、ハリルホジッチ監督にとっても新戦力発掘の重要なテストの場となる。ただ、五輪世代の成長を促し、五輪出場権を勝ち取って本大会を経験することが、18年W杯ロシア大会での日本代表の躍進へと繋がっていくのであれば、先を見据えた戦略的な選手選考があっても良いのかもしれない。
浅野はハリルホジッチ監督が視察に訪れた19日の浦和-広島戦(埼玉)で途中出場から貴重な同点ゴールを決めた。25分間の出場で11回のスプリント(時速24km以上)を記録。持ち味のスピードで浦和守備陣を切り裂き、決勝点にも絡む活躍で無敗だった浦和を破る原動力となった。ハリルホジッチ監督は試合後、「何人か面白い選手を見つけた」と語っており、大きなインパクトを残したことは間違いない。
所属する湘南で主に3バックの右でプレーする遠藤は、主将を務めるU-22代表ではボランチを担っている。1日のコスタリカ戦では前半6分に激しいコンタクトで相手からボールを奪うと、そのまま縦へスルーパスを通し決定機を演出。同36分にも左サイドへ大きく展開し、先制点の起点となっている。ハリルホジッチ監督が志向する球際に激しく、縦に速いサッカーにもフィットしそうだ。ハリルホジッチ監督は11日に湘南-名古屋戦(BMW)、15日には神戸-湘南戦(ノエスタ)と2試合続けて湘南の試合を視察している。遠藤は「たまたま見てもらえた」と謙遜したが、代表指揮官にとっても気になる存在であることが伺える。
U-22代表を率いる手倉森監督はA代表のコーチも務めており、仙台合宿の際には「東アジア杯に何人入れるかを意識しないといけない」と選手に語り掛けている。岩波は「A代表についてすごく意識付けをされる」と話し、遠藤も「A代表への意識は常に持っていなければいけない」と自覚を口にする。
13年の東アジア杯では柿谷曜一朗、山口蛍、青山敏弘らの活躍で優勝を果たし、彼らはその後W杯ブラジル大会のメンバーとなった。代表メンバー発表は23日。今大会も若手が大きく飛躍を遂げ、U-22代表にとっては6大会連続となる五輪切符獲得への端緒となることを期待したい。(デイリースポーツ・山本直弘)