40歳旭天鵬、十両陥落でも引退撤回を

 大相撲の40歳幕内・旭天鵬が引退をかけて、暑い名古屋場所をさらに熱くしている。番付は西前頭11枚目。来場所も幕内に残るためには最低5番は勝つ必要があり、6番勝てば安全圏といわれる。場所前から本人は十両陥落が決まれば潔く引退する決意を固めているが、記者はそんなに引退を急ぐこともないのではと提言したい。

 旭天鵬は04年に日本に帰化し、本名は太田勝。前の所属だった大島部屋の大島親方(元大関旭國、本名太田武雄)の養子になった。1974年9月13日、モンゴル生まれ。92年大阪場所で初土俵を踏み、98年初場所新入幕。12年夏場所で37歳8カ月の幕内最年長優勝を果たす。昨年秋場所で40歳の幕内力士となり「角界のレジェンド」と呼ばれるようになった。

 余談だが、旭天鵬は日本語がうまい。モンゴル出身力士のほとんどが日本語をしゃべれる中で、横綱鶴竜と並んでトップ中のトップだろう。時にこんなことも言うくらいだ。「それは日本語のニュアンスとしてちょっとおかしいよ」。さらに関西弁も達者だ。

 記者がモンゴル力士の日本語習熟番付を作るとすれば、横綱は旭天鵬と鶴竜で動かない。大関は横綱白鵬だろうか。横綱日馬富士はこと日本語においては幕下くらいか。新大関照ノ富士や逸ノ城は三段目といったところだろう。

 旭天鵬と鶴竜に共通しているものがある。それは根本に優しさがあり、他人への気遣いができるという点だ。この2人は本当に礼儀正しいし、怒ったところを見たことがない。素晴らしい人格者であり、人として尊敬できる器を持っている。これは記者の勝手な想像だが、だからこそ日本語という言語を極めたのだと思う。他人への気遣いをするためには、言語を理解しないと始まらないからだ。

 話を本筋に戻そう。旭天鵬が幕内残留を決めた場合は各種の記録への夢が広がってくる。以下、ざっと並べてみると-。

 ◇幕内在位 名古屋場所で史上2位の99場所。1位は魁皇の107場所。

 ◇高齢幕内 名古屋場所初日で40歳9カ月29日。大潮の40歳9カ月13日を抜いて昭和以降史上3位。九州場所初日で41歳1カ月26日で、能代潟の41歳1カ月19日を抜いて史上最高齢。

 ◇通算出場 名古屋場所前まで1856回で史上2位。1位の大潮の1891回まで、その時点であと35回。九州場所5日目で到達。

 ◇通算勝利 名古屋前まで924勝で5位。4位の北の湖の951勝まであと27勝。

 これらの記録は現役を続行したらの話。今場所で十両陥落が決まり、本人が宣言通りに引退してしまったら、それでジ・エンドだ。記者は言いたい。確かに力は衰えたし、下半身も細くなったように見える。先場所前は尿道結石も患った。だが、どこかに大きなけがをしているわけではないし、心身ともに元気ではないか。同期の若の里も十両に落ちてからも頑張って土俵を務めてる。

 旭天鵬は常々こう話していた。「記録は励みになる。目標があると頑張れるんだよね。モチベーション上がるよ」。今後達成可能な数珠玉の記録の数々が目の前にある。それをファンの声援とともに成し遂げてほしい。こう考えるのは、記者だけではないと思うが、いかがだろうか。(デイリースポーツ・松本一之)

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