元ロッテ清水氏のNZでの挑戦【前編】

 「野球振興」という言葉を耳にする機会は多い。ただ、どうすれば野球を広め、伝えられるか-。明確な答えは描けないのが現状だ。もしかしたら、この男の活動は将来のモデルケースになるのではないか。そう感じた。

 清水直行氏。現在の肩書はニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー(GM)補佐。ロッテのエースとして05年にはチーム31年ぶりの日本一にも貢献した男は、14年に現役を引退し、同年から遠く離れた南半球の地で活動を続けている。

 きっかけは左膝の故障から復活を目指す時期に映像で見た12年の台湾でのWBC予選。本戦出場を逃したニュージーランド代表だったが、そのポテンシャルにひかれたという。

 「例えばラグビーではオールブラックスがありますが、ニュージーランドの選手はトンガやカナダの選手に比べて体はそんなに大きくない。どちらかというと柔らかい筋肉を持った、強い選手が多いんです。WBC予選を見て、これは面白いんじゃないかなと思ったのが最初ですね」

 04年アテネ五輪、06年WBCを戦った経験から世界の野球へ興味を持ち続けていた清水氏。引退を決意したとき「世界から日本の野球がどう見えるのか、興味があった」という思いに駆られた。

 そして球界再編などを目の当たりにした経験から「このまま日本の野球って存続していけるのかと思ったとき、そういうことを考えられる仕事があったらいいなと。何十年後かにプロ野球が無くて『おじいちゃんプロで100勝したんだよ』って言っても『プロ野球って何?』という時代が来ると寂しいですよ。それを長く残したいと思った」という。

 世界へ野球を広める活動に携わることで、将来の日本野球が進むべき道が見えるかもしれない。清水氏は興味をひかれていたニュージーランドの野球連盟へ自ら手紙を出し、同国の野球の普及へ携わりたい思いを伝えた。

 「すぐに『本当にそういう思いでいるなら大歓迎だ』という返事が来ました。そこから話が進みましたね」

 だが、ニュージーランドで野球はマイナースポーツ。野球連盟も国のスポーツ省に属しているとはいえ小さな組織だ。昨年は無給の状態で活動を続けた。

 「今年は少しずついろんなところで支援してもらえたり、観光とタイアップする形で(収入も)出てくるかなとは思いますけど、確定はしていないです」

 そこまでの決意を持って目指す道とは?やはり統括コーチを務めるニュージーランド代表の強化か?清水氏の思いは、そうした発想とは少し違っていた。

 「ニュージーランドの野球を強くするために行ったという言われることが多いのですが、でも僕がやっていることは、日本の野球をどうやって世界に知ってもらうか、日本の野球を盛り上げるためにはどうすればいいのかということなんです」

 日本、ニュージーランド両国の「架け橋」となる清水氏の活動は、野球界という枠組みを超える広がりを見せている。(デイリースポーツ・中田康博)

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