曙が王道マットで天龍魂受け継ぐ
大相撲元横綱から転身し、05年7月にプロレスデビューした全日本プロレスの曙(46)が、7月25日の後楽園ホール大会で10周年記念試合を行った。11月に引退する65歳の天龍源一郎にウルティモ・ドラゴンを加えたトリオで秋山準社長&大森隆男&入江茂弘と対戦。現3冠ヘビー級王者は、「プロレス界の横綱」と呼んで尊敬する大相撲出身&全日本&3冠王者の大先輩を交えた試合で燃えた。曙が入江、天龍が秋山に同時に河津落としを見舞い、息の合ったところを披露。直後に曙はヨコヅナインパクト(脳天くい打ち)で入江を沈め、天龍の眼前で現在の実力をアピールした。
節目を飾った元横綱は、勝利インタビューでも自身のことより天龍を話題にした。「天龍さんからはいろんなものを感じた。同じコーナーにいてのみこまれるところもあった。(試合中に出された)指示も守ったし、リング上でファンの1人になって、タッチに来ると『オッ』と思った」と笑顔を見せた。
ハッスル参戦時に助けられた恩人でもある。おしゃぶりをくわえる『ボノちゃん』のキャラクターをやるべきか真剣に悩んでいるときに「どうしたの?」と声をかけられた。天龍からいろいろな話をされた上で、「今のファンは減るかもしれないけど、新しいファンもつく。やるなら100%、150%でやらないと。それがお客さんへの礼儀」と言われたという。曙は「それでボノちゃんに飛び込めた」と感謝している。
それでも、天龍の引退までに対戦したい気持ちはない。「同じくらいの年齢であたるなら。相撲もそう。『若貴、曙と誰かとどっちが強いのか』といっても答えは出ない。ロマンとして持っておきたい。絡めるだけで幸せ」とうなずいた。
天龍がレスラーとして育った全日本の頂点にいることを誇りに思っている。レスラー生活の10年間で一番の思い出を聞かれた曙は「初めて契約したとき」と13年9月に全日本所属となったことを挙げた。「いろんなベルトも取ったけど、契約を誘われるというのは認められたということ。契約した瞬間からプロレスラーとして頑張れた。ただ(リングに)上がってるんじゃなく、真ん中、中心として。楽しい」と胸を張った。
この日、天龍は古巣でのラストマッチだったにもかかわらず、曙の節目であることに配慮し「きょうは曙でいいでしょう」と言い残して控室へ消えた。単独で会見していた曙は逆に約10分後、「早く天龍さんにあいさつに行かないと怒られる。相撲の先輩で、3冠王者の先輩なんで」とコメントした。
天龍が、故ジャンボ鶴田さんらとの激闘で沸かせた全日本の伝統を受け継ぐ覚悟をもっている。「20年を目指して、もっともっと全日本プロレスを面白く、強く、熱くしていきます」。ファンに誓った言葉通り、16日には神戸でゼウスを破り、3冠王座を死守した。10年は通過点。相撲でも、プロレスでもトップを取った曙が“龍魂”を胸に、今後も王道マットをけん引していく。
(デイリースポーツ・大島一郎)