新米練習生だった西山ゆかり初Vに感慨

 女子ゴルフの「meijiカップ」(札幌国際CC島松C)で、プロ8年目の西山ゆかり(33)=フリー=がうれしいツアー初優勝を果たした。2年前から指導を仰いでいる男子ツアー5勝の師匠・芹沢信雄がキャディーとしてアシストした。その功績は確かに大きいが、実際にボールを打ったのは西山本人。この優勝は紛れもなく西山の力であり、同時に高校卒業後にプロを目指した選手の可能性を示す快挙だった。

 西山は神奈川県の藤沢西時代はハンドボール部に在籍。卒業後の18歳で父・武光さんの勧めにより静岡県・朝霧CCでゴルフスクールを開講していた男子プロ・時任宏治の門下生になった。

 当時、私は研修生体験企画の取材で朝霧CCを訪ねたことがある。その際、時任から西山の先輩練習生で後にプロになる日下部智子の練習ラウンドに付き合うよう頼まれた。その時のキャディーが、まだ初々しさの残る新米練習生の西山だった。

 西山は一般のキャディーがそうするように日よけ用のフードを頭にかぶり、慣れない手つきでクラブの運搬やライン読みを手伝ってくれたが、私は正直、この新米練習生が後にプロとしてツアーで活躍することになるとは思いもしなかった。

 当時、女子ゴルフ界は宮里藍、横峯さくら、諸見里しのぶ、宮里美香らジュニアからゴルフをたたき込まれた世代がツアーを席巻しようとしていた。仮に茂木宏美、日下部を育てた時任の手腕でプロテストはクリアしたとしても、ツアー優勝なんて夢のまた夢だと思っていた。

 ところが、である。08年にプロテストに合格した西山は、プロ8年目の「meijiカップ」で見事にツアー初優勝を果たした。しかも世界ランク8位のフォン・シャンシャンとの優勝争いを制し、さらにジュニア出身の星・鈴木愛をプレーオフで打ち負かして。

 私は幸運にも取材でその場に居合わせることができたが、あの西山がついにツアーの頂点に立ったのかという感慨に浸ると同時に、高校卒業後にプロゴルファーを志す選手に勇気を与える快挙を目の当たりにし、熱い思いで胸がいっぱいになった。

 高校卒業後にゴルフを始めた選手がツアーで活躍することがいかに困難か、それは今季の賞金ランク表を見れば一目瞭然だ。NEC軽井沢72終了時点で1位のイ・ボミから17位の藤本麻子まで全員がジュニアからゴルフを始めており、ようやく18位の西山が高校卒業後の18歳から。その後、19位の森田理香子以下26位の穴井詩までジュニア出身で、27位の茂木宏美が高校卒業後の18歳から。その後も30位の表純子の18歳からが見当たるくらいだ。

 もちろん、西山の快挙は本人の死に物狂いの努力によるところが大きい。練習生になってからおよそ15年の間、ゴルフに言葉にはできないほどの努力と情熱を傾け、さらに継続する力を持っていたからこそ達成できた偉業。継続は力であり、であるならば、才能とは夢をあきらめない力なのだろう。

 ツアーの中心がジュニア出身選手で占められる流れは、今後も高校生の永井花奈、勝みなみ、新垣比菜、蛭田みなみらが出てくるのは確実で、当分続きそうだが、そういう時代の流れだからこそ、西山の優勝が持つ価値は大きい。

 私はあの時、18歳の新米練習生が秘めていたあふれんばかりの才能を見抜けなかったが、こういう間違いなら大歓迎だ。おめでとう、西山さん-。

(デイリースポーツ・松本一之)

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