ヤクルト衣笠球団社長の改革とは…
14年ぶりのリーグ優勝を果たした東京ヤクルトスワローズ。悲願達成を果たした裏に、11年6月に同職に就任した衣笠剛球団社長兼オーナー代行(67)の多くの改革があった。
就任当初から「球団社長として就任した僕の使命は2つ。1つは東京ヤクルトスワローズを優勝させること。もう1つはヤクルト球団の経営内容を改善すること」という目標を掲げてきた衣笠社長。まず初めに着手したのが、戸田球場などの2軍施設の改善だ。
戸田球場の老朽化した外野フェンスを始め、冷暖房の設備がなかった一塁側ブルペンの投手控室。さらに、戸田の選手寮に隣接する施設を移転させ、そこに新たな室内練習場を建設など。3カ年計画として、選手育成の環境整備に努めた。
「優勝へは補強もしなければいけないが、長い目で見たときにはドラフトで取った選手を育成してチーム強化していくのが基本」
そして育成を基本線としながら、12年オフにはバレンティン、バーネットらと複数年契約。故障などのリスクも伴う中で積極的なチーム編成も行ってきた。実際に昨季まで2年間、故障に苦しんだバーネットが今季は守護神として活躍。「今年の成績がその延長線上にあるとはいえ、われわれとしても喜んでいる」と衣笠社長は話す。
昨オフはFAで成瀬、大引を獲得。これまでになかった大型補強で、周囲にも優勝に懸ける“熱”を示した。
もう1つの目標である営業面ではどうか。一昨年から導入した、QRコードなどを使った手軽なチケット購入方法が好評を呼び、さらにボックスシートも前売り発売とともに完売する人気。今年はもとより、最下位に終わった昨季にも観客動員数を伸ばしているのは、そうした地道な取り組みが実を結んできた表れだろう。
チームは昨季まで2年連続最下位に終わっていたが「小川前監督(現SD)が、今のレギュラー選手たちを積極的に起用して、去年ぐらいから花開いてきた。畠山、川端、山田…その選手たちを今日まで育ててきた小川さんの功績は大きい」と衣笠社長は評す。
選手の育成と補強、そして営業-。衣笠社長が掲げる目標の下、各現場の担当者が築いてきた礎が、優勝という目標を引き寄せたと言ってもいいだろう。
「行動を起こすまでに僕自身、球団経営者としての経験が必要だった。ただ改革はリスクを伴うが、やってみて失敗したらどうしようではなく、やってみるということです」
その勇気は最高の形で結実した。だが「勝ってかぶとの緒を締めよです。来年、再来年を見据えた形で進んでいかないといけない」と衣笠社長。改革は、これからも続いていく。
(デイリースポーツ・中田康博)