【野球】元侍J渡辺俊介、代表への思い
いよいよ8日に韓国との一戦で新たな国際大会「プレミア12」が開幕する。日本代表「侍ジャパン」が初代王者を目指す大会を前に、あらためて思うのは日の丸を背負う重圧と意義-ということ。
そこで社会人・新日鉄君津(現新日鉄住金かずさマジック)時代にシドニー五輪に出場し、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で連覇に貢献した前米独立リーグ・ランカスターの渡辺俊介投手に話を聞いた。
「日の丸を着けるというだけで、いや応なしに重圧を感じるものですよ」と渡辺。特にそれを感じたのは、初のプロアマ混成チームで臨んだ00年のシドニー五輪だという。
「他種目のアスリートと同じ選手村で過ごして刺激を受けましたし、壮行会には当時の首相が来られたりする。野球という世界だけでなく『日本を背負う』という今まで全く感じたことがない重圧がのしかかりました」
ロッテ入団後にはプロとして、06年に第1回WBCに出場する。ただ当時は新設の大会とあって、渡辺自身も「WBC自体がどんな大会になるかも分からない。日本もランキング的には下に見られていましたから。挑戦者という思いが強かった」と振り返った。
「スゴく楽しかったですよ。アメリカの球場、その雰囲気で戦える。ワクワクして楽しんでいる内に終わってしまったという感じでしたね」。しかし、この世界一から日本を取り巻く環境は変わる。
09年の第2回大会は、全く違う空気感での戦いが待っていた。それは大会直前の宮崎合宿から始まる。
「とにかく多くのファンが訪れましたからね。合宿中に代表落ちする選手もいる。スゴイ緊張感でした」。第1回の大会で日本の野球のレベルが認められただけに「それを損ないたくない。汚したくないという思いが強かった」というのだ。
「楽しかった」という前回とは異なり「連覇した時はホッとしました。精神的にもしんどかったですから」という戦いだった。ただ、そのWBC連覇は世界へ日本野球を広めていく。渡辺がそれを実感したのは、14年にメジャーリーグを目指して渡米してからだ。
「アメリカでもメジャーで長くプレーした選手はリスペクトされる。アメリカで行われた大会で連覇した日本。その日本で長くやっていた選手だからスゴいんだろうと、リスペクトしてくれますね」
さらに06年大会のキューバとの決勝戦を、子供のころにテレビで見たというキューバ人選手には「あの時のキューバ代表はあこがれだし、日本代表もリスペクトしている」と言われたこともあった。
それこそが代表の意義。渡辺は言う。「日本代表は、子供たちの目標であり続ける存在。代表選手は、すべての子供たちが見ていることを意識して価値を高めてほしい。それが、これからの野球の発展につながることは間違いないですから」
プレミア12、17年WBC、20年東京五輪…。これまでの侍の歩みを止めることなく、前へ進めていく。それが求められている。(デイリースポーツ・中田康博)