【スポーツ】具志堅氏、驚愕6オンスV
10月29日に都内のホテルで元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏の国際ボクシング殿堂入りを祝うパーティーが開催された。日本人ボクサーとしては、元世界フライ&バンタム級王者のファイティング原田さん以来となる快挙であり、元WBAフライ級王者で現役のまま自動車事故で他界した故大場政夫さんと同時の殿堂入り。6月には米国ニューヨーク郊外のカナストータでの記念式典に出席して大歓迎された。
「本当に感動したね。ボクシングをやってきて良かった。支えてくれた皆さんのおかげ」と改めて喜びを語った。この日は14人の世界王者が会場に集結。
輪島功一(元WBAスーパーウエルター級王者)
花形進(元WBAフライ級王者)
友利正(元WBCライトフライ級王者)
浜田剛史(元WBCスーパーライト級王者)
セレス小林(元WBAスーパーフライ級王者)
川島郭志(元WBCスーパーフライ級王者)
坂田健史(元WBAフライ級王者)
佐藤修(元WBAスーパーバンタム級王者)
現役選手では
八重樫東(大橋、元WBCミニマム&WBCフライ級王者)
粟生隆寛(帝拳、元WBCフェザー&スーパーフェザー級王者)
内山高志(ワタナベ、WBAスーパーフェザー級スーパー王者)
山中慎介(帝拳、WBCバンタム)
河野公平(ワタナベ。WBAスーパーフライ)
田口良一(ワタナベ、WBAライトフライ)
そうそうたる面々がパーティーを華やかに盛り上げた。
女子ではWBCアトム級王者・小関桃(青木)が16回防衛を記録しているものの、いまだに連続13回防衛という不滅の記録は具志堅さんが引退して30年以上が経過しても男子選手では誰も破っていない。WBOスーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)は、「目標は具志堅さんの防衛回数記録を超えること」と公言。とはいえ、現在は10度防衛中の内山と9度防衛中の山中の2人が、記録更新の可能性に最も近づいているといえるだろう。具志堅さんも「内山君と山中君にはボクの記録を追い越してほしい」と強い要望を出している。
では、当の現役王者2人の思いはどうか。まず内山は「当時が団体の数も少ないし、時代が違いますからね。具志堅さんの倍の数くらい防衛しないと、追いついたとか追い越したとは言えないでしょう」とかなり控えめ。確かに1980年代くらいまでは、世界王者でも年3~4試合ペースで防衛戦をこなしていた。簡単に比較はできないという見解には一理あると思う。
山中は同じサウスポーということもあって、具志堅さんの現役時のビデオを見て研究。さらに夫人が沖縄出身という縁で、石垣島にある具志堅用高記念館にも足を運んだことがあるという。「やっぱりコンビネーションとかは参考になりますね」と技術面では共鳴するところが多いが、防衛回数となると「自分は9回防衛してますが、具志堅さんの記録を超えるにはあと5回も防衛しないといけないということ。とてもじゃないですが、そんな先のことは考えがつかない。数字としては目標にしてますが、ひとつひとつの試合を積み重ねるしかないですね」とさすがにV13超えには現実味がなさそうだった。
ところで“ノックアウト・ダイナマイト”と呼ばれる内山。そして“神の左”の異名を取る山中。希代のハードパンチャーである2人が共通して着目していたのが、「あのグローブって、6オンスですよね」というものだった。
実はパーティーでは具志堅さんの現役時代の熱闘の数々を編集したVTRが約10分間流された。その道のプロが見れば、一目瞭然でグローブが小さいことが分かる。当時は中量級あたりまで6オンスのグローブが使用されており(現在は軽量級でも8オンス)、パンチの効き方がまるで違ったらしい。倒すチャンスも多いが、相手のパンチをもらうとKO負けを喫する危険性も高かったのである。以前、具志堅さんに現役時代のエピソードを聞いた時も、「6オンスのちっちゃなグローブで殴り合っていたと思うとゾッとするね」と語っていたのを思い出した。
高いKO率を誇る2人が同じような視点を持ったところが実に興味深かった。30年以上前のタイトルマッチを見ても、今でも全く色あせていないのは驚嘆に値する。プロ9戦目で世界のベルトを奪取したファン・グスマン戦、2度にわたって激戦を展開して試合後に両目がふさがるほど腫れたハイメ・リオス戦。内山も「あの顔の腫れ方は6オンスのグローブだからこそ」と指摘していた。記録にも記憶にも鮮烈に残った具志堅伝説。「ボクに続いて日本人ボクサーが世界に評価されてほしい。ぜひ殿堂入りを果たしてほしいね」と次代の殿堂入りボクサーを待望していた。(デイリースポーツ・北島稔大)