【野球】ロッテ京大出身田中、鍛錬の秋
ロッテ・田中英祐投手(23)が、千葉県鴨川市で行われている秋季キャンプで、文字通り日が暮れるまで汗を流している。初の京大出身プロ野球選手として注目を集めたルーキーイヤーだったが、同時に、試練を肌で感じた1年でもあった。田中は、そんな苦い思いを自らを鍛え上げることで振り払おうと、必死に歯を食いしばっている。
第2クール。昼下がりにスタートしたノックは4時間を超え、グラウンド周辺には外灯がともり始めた。若手投手陣5人による連帯責任で、決められた回数の中で誰か1人が1度でも失敗すると、最初からやり直しの“鬼ノック”だ。田中は土にまみれていた。そして、それが終わると、容赦なくタイヤ押しのメニュー。どこまでも肉体を追い込む日々だ。
1年前まで勉学と野球との両立が常だった右腕にとって、純粋に野球だけに打ち込む生活は、今年が初めてだった。「精神的にも肉体的にも、プロで1年間やっていくのは大変だと感じた」と田中。今季4月29日の西武戦でプロ初登板したが、計2試合で防御率13・50。ルーキーのほろ苦デビューというのは決して珍しくない。だが田中はその後、2軍暮らしの中でもがき苦しんだ。試行錯誤を繰り返したものの、自分らしさを見失い、復活の契機もつかめなかった。
西の最難関大学に現役合格し、プロ野球選手という夢も果たした。究極の文武両道を貫き、誰よりも狭き門をくぐり抜けてきたはずの右腕も、決して甘くはないプロの世界の壁にぶつかった。
「1年間、試合に合わせていくだけの体力がなかった」。150キロ近いスピードボールを投げられる分、瞬発力は備わっているし、ランニングメニューをやらせても先頭を切って走ることがほとんどだが、年間を通してのプロ野球選手としての体力の器には遠かったということになる。プロとして過ごした最初の1年は、自らの課題を痛感し、理解するための期間となった。
伊東監督の方針で、今秋キャンプで故障あるいは離脱した者は、来春の石垣島キャンプで2軍スタートとすることを通告している。サバイバルは既に始まっている。「2軍スタートしたくありません」と田中。飛躍の2年目に向け、実りの秋とする。
(デイリースポーツ・福岡香奈)