【競馬】G1・3勝馬マンボ復活なるか
もう、なりふり構ってはいられない。惨敗続きのG1・3勝馬メイショウマンボが、前走の金鯱賞12着後、栗東トレセンで障害練習に取り組んでいた。
何も、本格的にジャンパーとして鍛えようというわけではない。「ちゃんと人の言うことを聞けるようにするためですね。一度嫌と思ったら動かない馬なんですが、その嫌々を少しでも改善したいので」と飯田祐史調教師は意図を説明した。
13年オークスを皮切りに牝馬G1を3勝。この年の最優秀3歳牝馬に選ばれたメイショウマンボは14年3月、父・飯田明弘調教師の勇退に伴い、新規開業した息子の厩舎へと転厩した。しかし、その後はいばらの道が続く。同年5月のヴィクトリアマイルこそ2着に食い込んだものの、その後に並べた2桁着順は実に計10回。気性的な難しさを露呈し、どうしても途中で競馬をやめてしまうのだ。4走前には川崎の交流ダート重賞に挑戦するも、期待むなしく6着(勝ち馬に2秒4差)に終わっている。
周囲には引退を勧める声も多くあったそうだが、馬主からの続戦要望もあり、何とかして馬が走る気持ちを取り戻すよう試行錯誤を繰り返してきた。「他の調教師さんから“もう無理やで”と、よく言われましたよ。“でも、やることはやらんとね”と毎回答えていました」と担当の塩見覚助手は話す。
前述した障害練習もオーナーサイドからの提案だった。元障害G1ジョッキーの今村康成助手がしっかりと調教をつけ、事情を知った松永昌博調教師からは「調教にウチの森(一馬騎手)を使っていいよ」と、うれしい申し出。塩見助手は「やっと最近、普通に跳べるようになりました。コースに行くときにゴネなくなったし、尻尾を扇風機みたいに振り回さなくなった。以前よりは扱いやすくはなったと思う」と、かすかな進歩を口にした。
追い切り自体は相変わらず動いている。馬体も特別しぼんではいない。17着だった今年のエリザベス女王杯では「やめてはいなかった」(武幸四郎騎手)という証言もあった。何かのキッカケでスイッチが入れば…という思いは完全には捨て切れない。「障害練習をやったからといって、いきなり好結果が出るか、といえば…分かりません。そんな簡単なものではないし。仮に100%の力が出せるようになっても、最後の直線では100%のさらに上が求められる世界。どうでしょうね」と仕上げ人は半信半疑。確かに、劇的な復活シーンを求めるのは酷だろうか。ただ、そろそろ陣営の苦労が報われてもいいんじゃないか、とも思う。
2016年は京都金杯から始動予定。マンボは一体どんな走りを見せるのか。勝てなくてもいい。何か少しでも兆しがあれば、また前を向いて頑張れる。(デイリースポーツ・長崎弘典)