【野球】阪神2軍キャンプは掛布色全開

 1988年にユニホームを脱いで以来、28年ぶりに安芸で31番を背負った掛布雅之2軍監督(60)。ミスタータイガースが織りなすキャンプを見て、第一印象は変わったなと思った。それは組まれる練習メニュー、そして練習の雰囲気にある。

 「今の子たちは“抜く”ことを知らないんだよね」とつぶやいた掛布2軍監督。現役時代、キャンプのメニューを見ると顔をしかめていたと言う。そして次に考えたのはどこで抜くか-。「キャンプすべてのメニューを100%でこなすことはできない。だから日によって、きょうは打撃を100%でやろうとか自分で決めていた。もちろん他のメニューは抜くと言ってもちゃんとやるよ。決して、抜いてるようには見せなかったよ(笑)」と当時を振り返る。

 だが時代は変わり、良くも悪くも現代の選手はマジメ。与えられたことを忠実にこなす選手が増えた。その一方、「全部のメニューを70%の力でやっちゃおうとする。それだと壁を越えられないよね」。確かに100%の力でなければ自分の限界を突破することはできない。惰性の練習では飛躍のヒントを見つけることもできない。

 阪神では積年の課題となっている若手の伸び悩み。ファームでは猛練習を課した時期もあったが、鳥谷以降、定位置を奪う若手は出てこなかった。DCとして2年間、ファームを見てきた掛布2軍監督はそんな若虎の気質に着目。メニューを一新した。

 「やらされる練習ではなく、自分でやる練習にしてほしい。自分で責任を持ってほしい」-。第1クール3日目には、午後1時から自主練習の時間を設けた。前日の夕食時に各選手がメニュー表に自らやりたいメニューを記し、コーチ陣をそれに合わせて配置した。

 異例の試みはこれだけではない。午前中には1カ所15球限定のフリー打撃を実施。それ以外に打撃練習はなく、自主練習でバッティングを選んだ選手以外は1日15球しか打てない環境を作り出した。

 「シート打撃のフリー版というのかね。15球しか打てない中で選手がどうするか。その方が集中力が高まる。打撃以外でも守備や走塁を合わせると、実戦に近い練習ができる。担当コーチもいろいろ考えてやってくれているから」と明かす掛布2軍監督。実際に見ると、取り組む姿勢は明らかに変わったような印象を受ける。

 例えば1時間の特打を課されると、もう消化するだけでいっぱいいっぱいになる。だが15球であればスイングの軌道を確かめ、修正しながら打つしぐさが多くの選手に見受けられた。自主練習でロングティーを選択したある選手は、打球の軌道やスピンのかかり具合を確かめながら、1球、1球、丁寧に打っていた。その数は自然と300近くに上った。

 球団スタッフも「そら自分で選んだメニューだから、ちゃんとやらなあかんわな」と変化を見いだしていた。もちろんプロの世界は結果で正しかったか否かが判定される。掛布2軍監督も「結果で何を言われるか分からないけど」と、育成の現場を預かる責任を28年ぶりに身にまとった背番号31に感じている。

 「でも何かをやらないと結果は出ないということもあるから」-。キャンプに向けた打ち合わせの段階で、四藤球団社長、高野球団本部長には「試してもらっていい」と背中を押してもらった。ベテランにも積極的に声をかけ、まだ開始から3日目だが明るく、意欲的に練習へ取り組む空気が漂っている。

 キャンプイン前日、「何とか1人でも多くの若手を金本監督率いる1軍の戦力として送り込めるように。そして秋には優勝できるように」と力を込めていたミスタータイガース。斬新な決断の裏には必ず、批判の2文字がつきまとう。それを恐れることなく、改革に着手した掛布2軍監督。間違いなく“虎の穴”は変わろうとしている。(デイリースポーツ・重松健三)

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