【野球】逸材そろう昨夏の高校日本代表
終盤にさしかかったプロ野球の春季キャンプ。高卒ルーキーの奮闘が話題を呼んでいる。楽天のドラフト1位・オコエ瑠偉外野手(関東第一)は初の対外試合で初安打、初打点、初盗塁。ロッテ1位の平沢大河内野手(仙台育英)も、初安打を放った。中日1位の小笠原慎之介投手(東海大相模)も、1軍キャンプで“英才教育”を受ける。
彼らは昨夏のU-18ワールドカップ(W杯)で準優勝した高校日本代表の一員。同じ日の丸を背負って戦ったメンバーの大学進学組も、2月上旬頃から相次いで入寮し、練習に合流した。プロほどの注目度はないが、こちらの面々も見劣りしない実力派がそろっている。
明大に入学する最速148キロ右腕・森下暢仁投手(大分商)は、U-18W杯の3試合で10回無失点。伸びのある直球と抜群の制球力で、プロ志望なら「1位の可能性もある」と話すスカウトもいるほどの評価を受けていた。
進路に悩んだ時期があったが、進学を選択する後押しとなったのが、高校日本代表での経験だった。昨年8月、U-18W杯前に大学日本代表との壮行試合が行われた。そこで創価大・田中正義投手の剛球を目の当たりにし「力の差を感じた。大学に行っても、こんなに力が付くんだ」と衝撃を受け、迷いはなくなったという。
森下は「あんな球が投げられるように、4年間しっかりやって、即戦力でプロに行けるような投手になりたい」と、抱負を語っていた。ルーキーながら3月の米国キャンプメンバーに名を連ねるなど、すでに期待は高い。
そしてU-18日本代表で、チームメートから“ナンバーワン投手”の評価を受けたのも、実は進学組だ。絶賛する声が上がったのが、駒大に入学する上野翔太郎投手(中京大中京)だった。「上野の真っすぐが一番すごかった。どこまでも伸びていきそう。同じリーグじゃなくてよかった」。そう話したのは、慶大に進む郡司裕也捕手(仙台育英)。ボールを受けた印象は、プロ入りした他の投手よりも強烈だったという。中京大中京でもバッテリーを組んだ伊藤寛士捕手(法大入学予定)は「シート打撃でも直球を打った記憶がない。打ちづらいんです」と明かした。
U-18W杯では、3試合18回無失点で最優秀防御率を受賞した最速144キロ右腕。「プロのキャンプを見ていて、うらやましい部分はある」と話しながらも「4年後はあそこに立てるようにしたい」と力を込めた。目標は大学日本一と、DeNAのドラフト1位・今永昇太投手のように駒大を背負うエースになること。今春から東都2部で戦う名門を1部に復帰させるべく、汗を流す日々が始まる。
法大には、伊藤のほかに船曳海外野手(天理)、宇草孔基内野手(常総学院)が入学。昨春のリーグ開幕戦に、入学直後の1年生バッテリーを起用したチームカラーもあり“日の丸ルーキートリオ”の出番も早いかもしれない。
慶大の郡司も、捕手出身の大久保秀昭監督から「キャッチャーとしての雰囲気を持っている。オープン戦で使ってみて、出てきてくれたら面白い」と、期待をかけられている。五輪出場やプロ経験もある指揮官から“捕手道”をみっちり学べるのは、大きなプラスだ。
また、U-18W杯で首位打者と打点王の2冠に輝いた勝俣翔貴内野手(東海大菅生)、同じく故障離脱まで主軸を務めた豊田寛外野手(東海大相模)は、国際武道大の門をたたいた。攻守に渋い働きを見せた津田翔希内野手(浦和学院)は東洋大、杉崎成輝内野手(東海大相模)は東海大、そして主将を務めた篠原涼内野手(敦賀気比)は筑波大に進む。
法大に入学する宇草は大学日本一を目標に掲げ、「U-18でああいう経験があったからこそ(将来)プロに行きたいという気持ちになった。追い抜いてやるぞという気持ちで、頑張っていきたい」と意気込んだ。ひとまず道は分かれても、ともに世界で戦った経験はかけがえのない財産。プロとなった仲間の存在を刺激に、進学を選んだ球児たちがどんな成長を遂げていくのか。大学での彼らのプレーを、ファンにはぜひ注目して追いかけてほしい。(デイリースポーツ・藤田昌央)