【スポーツ】失敗から学ぶ 渡辺新会長
ワタナベジムの渡辺均会長(66)が、2月末に都内で行われた東日本ボクシング協会の総会で、3期9年を務めた大橋秀行大橋ジム会長に代わり第13代協会長に就任した。
大橋会長の前が輪島功一会長、その前が原田政彦(ファイティング原田)会長、さらに前が第9代の米倉健司会長…で「皆さん偉大なチャンピオン。ボクサーとして何の実績もない私ですけど、そういう私だからできることもあるのでは」と言う。
何の実績もない-は謙遜ではない。通算7勝(0KO)6敗2分で、東洋ミドル級7位、日本ミドル級3位が自己最高。プロテストは5度目でようやく合格した。1度目はミドル級の受験者が3人しかおらず、スパーリングは好感触だったが、試験官に「お前、もう1回やれ」と、2人目との対戦を指示されて「できません」と答えてアウト。
「もうヘトヘトだったんですが、普通は無理してもやりますよね。テストなんだから。でも、私はできなかったんですね」と、振り返る。この試験官が、名物インスペクターの故丸谷郡造氏で「顔を覚えられたんですね。次からは“また来たな”と印象で落とされたかもしれない」不合格が3度続いた。
この経験が後の選手育成法や、ジム独特のカラーにつながる。「今の若い選手は本当に偉いですよ。恵まれた時代に、血を流して闘うんですから。4回も落ちた私とは根性が違います」と、独特の“下から目線”。
1人でも世界王者をつくれば大成功の世界で、内山高志を筆頭に、河野公平、田口良一と3人の現役世界王者を擁する。「内山は別格として、河野、田口にも厳しいことは言いませんね。自分の現役時代はこれだけやったのだから、お前もやれ!というのがない」と“渡辺流”はあくまで柔軟だ。
2月の総会では「これからは、ジム運営は現場スタッフにできるだけ任せ、ワタナベジムに注いだエネルギーを、協会に注ぎたいと思っております」と、あいさつした。
渡辺新協会長の、もう一つの手腕に期待したい。(デイリースポーツ・津舟哲也)