【芸能】七色に変化する伊集院光の魅力
ラジオ業界最大級の改編がこの春に行われる。TBSラジオ、平日朝の長寿帯番組「大沢悠里のゆうゆうワイド」(月~金、前8時30分)が4月8日で30年間の歴史に幕を下ろし、土曜日午後3時からの週1回に枠移動。後継番組として深夜ラジオでカリスマ的人気を誇る伊集院光による「伊集院光とらじおと」(4月11日スタート、月~木、前8時30分)がスタートする。伊集院はタブーを恐れないラジオと、人当たりの良いテレビとのキャラの違いから、ラジオが「黒伊集院」、テレビが「白伊集院」とファンの間では呼ばれていたが、新番組では、どんな伊集院を見せるのだろうか。
3月18日に行われた「伊集院光とらじおと」と、同時間帯の金曜日を担当する「有馬隼人とらじおと山瀬まみと」の記者会見では、多くの質問が伊集院にぶつけられた。その中で、深夜ラジオとの違いを尋ねられた伊集院は「昔からラジオの僕とテレビの僕がかなり違ったりするので、そこを言われることはある」とした上で、こう表現した。
「子どものころから親戚のおじさんの前でしゃべるのと、友達の前でしゃべるのと、学校の先生の前でしゃべるのとで違う。中身はいっしょなんだけど違うのと一緒で、(テレビでは)ちょっと上の方を想定してしゃべるような気がします。それが多分、聞いている方から言うと深夜とずいぶん違うなってなるかもしれませんけど」
ラジオやテレビでのトークで、視聴者やリスナーの「層」「年代」をイメージしているからこそのキャラクターの変化。これがテレビは「白」でラジオが「黒」と呼ばれる由縁と言えるのだろう。
テレビでの伊集院は「Qさま!!」(テレビ朝日系)に代表されるような、ひらめき力に優れた博学で人当たりの良いおおらかな人物。それに対して、現在放送中の深夜ラジオ「月曜JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力」ではタブーを恐れないトークが売りで、系列のTBSが制作したドラマや映画をばっさりと斬ることもある。
ただ、深夜ラジオであっても、突拍子もないテーマのトークをしても、できる限り幅広い人に伝わるような努力を惜しまない。例えば、プライベートで行っている日本各地のバッティングセンター巡りについて話すことがある。このテーマそのものは一般的ではないにしても、どんなオヤジが店番をしているか、どんな寂れた場所にあるか、どんな点に郷愁を感じさせるか、といった状況描写には最大限の力を注ぐ。伊集院が好きな最先端の電化製品について話す時も、どんな点が優れていて、未来を感じるのかを喜々として解説する。その話術にリスナーは引き込まれる。
この日の会見でも、「深夜放送との違い」や「伊集院光の特性」といったひと言では答えにくい質問にも当意即妙に、分かりやすく返していった。どのような番組にしたいかという点で、「(自分が)49(歳)なりに、上の65とか70歳、80歳の人たちと、25とか30歳の人たちのうまい仲介ができればなと。『おじさんたちのころは携帯なかったんだよ』『携帯なかったらどうしてたの』っていう話を若者に聞かせながら、『先輩の時はどうでしたっけ』っていう話をできるような。その逆もできるような。お互いが『何か面白い話を聞けたね、今そうなんだ』(と思える)みたいな」と世代間をつなぐ番組を目指すと語った。
テレビの視聴率に当たるラジオの聴取率が最も高くなるのは、4月から伊集院が担当する平日午前の時間帯とされている。ラジオをよく聞く年代は50代以上の大人の層が多いが、伊集院が担当するとなれば、20代、30代のリスナー開拓も期待できる。平日の朝を何色の伊集院が彩るのか、耳を傾けたい。(デイリースポーツ・広川 継)