【ライフ】まだあった!乾電池の自販機
自動販売機といったら、まず思い浮かべるのは飲料を売っているものだろう。しかし、ひと昔前にはさまざまなものが「自販機」で売られていた。コンビニやネットショッピングのない時代、生活用品を売る自販機は24時間いつでも買えるため重宝されてきた。例えば、街の電器店の店先に当たり前のようにあった乾電池の自販機だ。昭和を感じさせる懐かしの自販機。果たしていまだに存在するのか、調査してみた。
お目当てのものはなかなか見つからない。電化製品を買おうと思えば、大型家電量販店に行くのが主流のご時世。そもそも、街の電器店自体を探すのが難しいのだ。やっとのことで店を見つけても、乾電池の自販機があった形跡すらない。自動販売機製造事業者の業界団体である一般社団法人・日本自動販売機工業会によると、現在、会員には乾電池の自販機を製造する会社はなく、普及台数などの調査データでも、10年ほど前から乾電池は対象外に。さらに乾電池の製造大手・パナソニックAISに問い合わせると、自販機の台数や、現在でも自販機を製造しているかは「わからない」とのことだった…。
もはやタイムスリップでもしなければ見つからないのか。諦めかけて訪れたのは、大阪・高槻市にある高槻センター街。JR高槻駅と阪急高槻市駅にほど近く、レトロな雰囲気を残す商店街だ。1931年(昭和6年)に前身の「新京町商店街」としてオープンと、歴史も申し分ない。わずかな望みをかけてアーケードを進み、電器店「清水ラジオ店」へと向かう。看板のある表口から建物の左手に回ってみると、そこには、電灯を光らせた乾電池の自販機があった!
シンプルに「パナソニック乾電池」と表記された自販機は想像していたものよりも新しめで、飲料自販機とほぼ同型のようにみえる。アルカリ、マンガンに加え、最新式の乾電池「エボルタ」までラインナップされた充実ぶりだ。店主の清水数夫さんによると、店舗改装のタイミングで25年ほど前に設置した“二代目”。売り上げは月に数千円程度だが「コンビニではほとんど並べられていない、比較的に安価なマンガン電池がよく売れる」という。今でも現役バリバリの自販機だ。ちなみに“初代”の方はというと、40年ほど前に設置。多いときには1日1000円前後を売り上げていたが、老朽化で20年ほど前にお役ご免となった。それでも撤去はされず、自動販売機の役目は果たしていないが、周辺大学の学園祭などのチラシが貼られ、ローカルニュースの発信に一役買っている。
自販機を「外灯、防犯替わりに」と笑う清水さんだが、毎日、中を確認して減った分だけ乾電池を補充している。“初代”、“二代目”ともに、撤去の予定はなく、今後も“二代目”の販売を継続していくそうだ。何でも手軽に買える現在では“昭和の遺産”になったともいえる乾電池の自販機。身近な場所にまだ残っているか、探してみては?(デイリースポーツ・佐藤敬久)