【スポーツ】室伏引退 新時代の幕開け
陸上でも、ついに1つの時代が終わりを迎えた。陸上男子ハンマー投げのアテネ五輪金メダリストの室伏広治(41)=ミズノ=が24日、2年ぶりに競技復帰を果たした日本選手権終了後、現役引退を表明した。
“鉄人伝説”は、突如として終焉の時を迎えた。雨の降りしきる中、3投目がファウルになるのを見届けると、室伏は観衆に向け手を合わせた。トップ8に残れず、12位に終わり、日本選手権では3位だった94年大会以来、22年ぶりの敗戦。その後、室伏はテントで後輩たちと握手を交わすと、晴れ晴れとした表情で語った。
「五輪、世界を目指すには体力の限界を感じた。寂しいけど、誰しもいずれやってくること。1つの区切りです。今後は後輩たちに期待したい」。
大会前に行われた公開練習では、1歳年上のイチローが、通算4257安打の日米通算安打記録の偉業を達成したことに触れ「体を維持し、トップパフォーマンスを出し続けている。自分も続けたい気持ちがある」と、今後の現役続行へ含みをもたせていただけに、取材エリアには衝撃が走った。
これで今年に入り、女子マラソンの野口みずき、競泳の北島康介、体操団体のメンバーだった塚原直也に続き、4人目のアテネ金メダリストの引退。過去最多タイの16個の金メダルを獲得した同大会から12年。残る現役選手は、レスリング女子でリオデジャネイロ五輪にも出場する吉田沙保里(フリー)と、伊調馨(ALSOK)だけとなった。
ただ、一時代の終焉は、新たな時代の始まりでもある。残り1カ月半を切った8月のリオデジャネイロ五輪では、競泳で萩野公介(東洋大)、瀬戸大也(JSS毛呂山)ら、体操では白井健三(日体大)、レスリングも吉田、伊調の後を継ぐ存在として登坂絵莉(東新住建)ら若手選手が堂々の金メダル候補として乗り込む。陸上もまだ金メダルには遠いが、ケンブリッジ飛鳥、山県亮太、桐生祥秀が日本の悲願9秒台突入を目前としているなど、若手の台頭が目立つ。
20年東京五輪に繋げるという意味でも重要なリオ五輪。新たな“伝説”の始まりに期待したい。(デイリースポーツ・大上謙吾)