【芸能】映画「ワンピース」原作者・尾田氏のヤバ過ぎる本気度…異例の関わり
国民的コミックの3年半ぶり劇場版「ONE PIECE FILM GOLD」が23日に公開される。「ドラゴンボール」や「名探偵コナン」「ドラえもん」など興収35億円超の作品もあり、映画界で存在感を強める原作ものアニメ映画。中でも「ワンピース」に関して、こんな声が業界中にとどろいている。いわく「原作者・尾田栄一郎の本気度がヤバい!!」。総合プロデューサーとしてクレジットされる尾田氏について、「-GOLD」のプロデューサーで東映アニメーションの櫻田博之氏を直撃した。
劇場版13作目となる「GOLD」だが、尾田氏が本格的に関わる「FILM」シリーズは「STRONG WORLD」(09年、製作総指揮)、「Z」(12年、総合プロデューサー)に続いて3作目。櫻田氏は「尾田さんの関わり方が加速してきている」と明かす。ただでさえ多忙な「週刊少年ジャンプ」での連載を抱える尾田氏が映画に関わった作業量はシリーズ史上最多という。
悪魔の実の能力を持つ主人公ルフィが個性的な船員たちと大海賊時代を冒険する大河ドラマ。「Z」公開直後から次作の構想が練られ、ラスベガスを彷彿させる黄金の巨大船グラン・テゾーロを舞台にした「GOLD」の構想が固まったのは2014年秋だったという。尾田氏が手がけたキャラクターの衣装や裏設定などの資料は100枚以上。悪役のボスとなるギルド・テゾーロの人生はA4用紙7枚にびっしりと書き込まれた。
注目すべきはテゾーロの悲劇的な過去や部下たちとの出会いは、設定上、詳細に作り込まれているにもかかわらず、映画内で事細かに語られることがない、ということ。櫻田氏は「設定を生かしてしまうとテゾーロの映画になってしまう。尾田さんはブレない。あくまでも、ルフィたちの活躍を描きたいんです」と説明する。
「テゾーロの人生をめいいっぱい作って、どれだけ捨てるか。捨てつつ、どれだけいいものを入れていけるか。“材料”がたくさん出てきて、その1番いいところだけを使って“料理”してください、と。僕らもプレッシャーでした」
原作でも、週刊連載の1週間分は通常19ページだが、尾田氏は毎話30ページほど考えたものを圧縮しているという。「ワンピース」が圧倒的な支持を受ける理由の一端が、映画にも受け継がれていると言える。
画コンテのチェックをした際は、言葉でイメージを伝えるのではなく、クライマックスの残り10分についてのネーム(ラフ原稿)を書き下ろした。実に34ページ分。「1週間、尾田さんから連絡がないのでおかしいな、と思っていたら、そういうことか、と」と櫻田氏は笑うしかない。
歌と踊りを融合したエンターテインメントショーとバトルシーンが交差する12分間の壮大なオープニングは、「オープニングがつまらない映画はダメです」が持論で、自らを「オープニングフェチ」と呼ぶ尾田氏のこだわりが詰まったシーン。自らが主導権を握って決めた劇中音楽のレコーディングやモーションキャプチャーの撮影現場にも立ち会う徹底的な現場主義で、自らのイメージを伝えたという。言うまでもなく、人気漫画の原作者としては極めて異例の関わり方だ。
昨年4月、櫻田氏らスタッフは世界観のイメージを膨らませるためラスベガスを取材した。帰ってくると、尾田氏に告げられたという。「見に行って、圧倒されていてはいけない。ラスベガスに満足していてはいけません。それを超えるものを作りましょう」。
宣伝の担当者には「今までにないようなことにチャレンジしてください」とお願いした。結果、配給会社が違い、かつ、公開日が1週間も違わない、映画「シン・ゴジラ」(29日公開)とのコラボが実現するなど、面白いものを見せたい!!という尾田氏の哲学は「GOLD」に関わるすべての事柄に息づいた。
総合プロデューサーの冠に偽りなし。櫻田氏は「尾田さんの肩書きをどうするか、という話で“CEO”まで考えました。“ちょー・えらい・尾田さん”です」と、どこまでも楽しそうだった。(デイリースポーツ・古宮正崇)